『ワンカラ』 オススメ度:★★★☆☆

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神田駅にあるカラオケボックスです。
ここの何が変わっているって

日本初の1人専用カラオケボックス

だってことです。
最近1人カラオケをする人が増えてるらしいとは聞いてますが、とうとう専門店まで出来てしまいました。
では、詳細をご案内しましょう。

カラオケ店を対象にした、とある調査によれば全利用客の実に20%ほどが1人利用だそうです。いや、意外なほど高いパーセンテージです。
一昔前なら1人カラオケって、1人焼き肉につぐ寂しい行為の代表格でしたけど、今やもう、そういう時代でもないようです。1人は普通。1人こそ至高。


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▲宇宙船をイメージした店内。撮影は厳禁です。

神田駅から徒歩2分。オフィス街にございます。土曜日の夜に行ったのですが、24個の部屋はすべて埋まっており、10分ほど待ちました。繁盛しています。
受付や廊下には「店内 撮影厳禁」の大きな貼り紙が何枚も貼られていました。ですんで、今回はパンフレット掲載の写真を使って、記事を構成しております。

店内は宇宙船をイメージしており、受付のことを「ターミナル」、個室のことを「ピット」、入店のことを「ピットイン」と呼びます。店員さんのユニフォームも、近未来的なテカテカした黄色のものです。真っ暗闇の宇宙を旅する孤独と、1人カラオケの孤独をかけているのでしょう。

利用料は、夜の時間帯が1時間1100円と、普通のカラオケ店に比べてやや高め。さらに、ピット内にはスピーカーがないので、ヘッドフォンが必須です。持っていない場合は、ターミナルにて300円でレンタルできます。
公式サイトでは

ヘッドフォンを装着!
外界から完全遮断!あとは歌うだけ


と表記が。
スピーカーを置かずヘッドフォンを利用するのは、コスト削減の意味もあるでしょうが、なにより外界から己を遮断をするためなのです。外界との交わりを断つ場、それがワンカラです。



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▲ブース内は畳1畳半ぐらい。あちこちに「撮影厳禁」の張り紙がされています。

1畳半ほどのスペースに、歌詞が表示される液晶テレビ、アンプ、小型カラオケが備えつけてあります。マンガ喫茶の個室に近い印象です。
録音装置もあるので、自分の歌声をCDにすることが可能です。自作CDをプレゼントすれば、どんどん友人が減っていくでしょう。1人カラオケのニーズを、そうやって、さらに高めていこうという狙いに違いありません。

なお、ブース内にもでかでかと「撮影厳禁」のポスターが貼られています。博物館系のスポットならいざ知らず、カラオケボックスでなぜこれだけ撮影を強く禁じるのでしょうか。
『1人専用カラオケ 実用新案出願中』とサイトや広告ポスターなどで頻繁にアピールしているので、おそらくアイデアを盗まれることを警戒しているのでしょう。運営会社のこういった他者への警戒心は、ヘッドホンをすっぽりかぶり、自分だけの世界で歌を歌う利用客の心理と、表裏一体なのかもしれません。



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▲1人カラオケとは、己と向き合う作業と見つけたり

実は、僕、この日がはじめての1人カラオケでして。
最初の20分はとまどいがありました。自分しかいない状況にも関わらず、なぜだか全力で歌うことが恥かしいのです。ちょっと引いたところにいるもう1人の自分に、観察されている感覚。
誰も見ていない、だが、自分自身が見ている。恥かしい。恥とは、他者との関係によって生まれるのではなく、己との対峙によって生まれるものなのかもしれません。
そのようなどうでもいいことを、ぐずぐず考え、モジモジしながら「透明人間」を歌っていると

恥かしくなったり病んだり咲いたり枯れたりしたら
濁りそうになったんだ


と、椎名林檎さんがメッセージを発してくれました。

ああ、まさに、今の僕だ。

見かねた林檎さんが、僕に、僕だけにメッセージを送ってくれたのだ。僕は、透明人間さ。ひたすら透明でいたいのさ。

僕は歌いました。林檎さんの応援にこたえるように、声が枯れるほど、歌いました。自分をさらけ出しました。
1人しかいないのに、自分をさらけ出すとはおかしな表現ですが、そうとしか言いあらわせない心境だったのです。
あっと言う間に1時間経過。退出の時間をつげる文字が、液晶テレビに映しだされます。

ピットはガラス張りになっているので、中の様子がよく見えます。
帰り支度を整え、受付に向かいながら、ずらりと並んだブース内に目をやると、ヘッドフォンをつけた男や女が、1人黙々と歌っています。こうして見ると、なんだか奇妙な光景です。

「どこかで見たことある光景だなあ」とぼんやり感じていたのですが、たった今、分かりました。懺悔のシーンです。映画などでよく見る、懺悔室で罪を吐露するシーンです。
椅子に座り、向こうに神父がいる壁に語りつづける罪人。動きはないものの、熱がこもっている語り。1人カラオケにそっくりです。そう、1人カラオケは平成の懺悔室だったのです。


【総括】

普通のカラオケボックスで1人カラオケするのと、そんなに変わりません。まあ、みんな1人客ですから、入店時に恥かしくないってことが最大の利点でしょうか。他にはありませんし、話題作りに1度行ってみても良いかもね、という点を評価して★3つとさせていただきます。




「ワンカラ」の情報
オススメ度:★★★☆☆
アクセス:JR「神田駅」から徒歩2分
住所:東京都千代田区鍛冶町2-2-9
電話:03-5207-9101
営業時間:10:00~06:00
定休日:なし
予算:昼1時間600円、夜1100円
関連URL:公式サイト