『執事喫茶スワローテイル』 オススメ度:★★★★☆


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執事カフェには数年前から「行こう行こう」と思ってたんですが、なかなか足が進まず、その間、メイドカフェには何度も行っちゃってるのは、男の悲しいサガというものでしょう。

決意をふり絞り、ようやく池袋の乙女ロード沿いにある『スワロウテイル』に行ってまいりました。スワロウテイルは執事カフェの草分け的存在。休日の予約はなかなか取れない、超人気店でございます。
いやあ、さすがに雰囲気作り、徹底してました。





スワロウテイルはディナータイムなら2時間、それ以外なら1時間20分と、制限時間で区切られた予約制です。
土日は予約を取るのが困難なので、平日夜に行ってまいりました。まあ、平日でさえ、ほぼ全ての時間帯が満席になるほどの人気ぶりなんですけどね。


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▲池袋は乙女ロード沿いに、執事カフェへと続く階段があります

毎夜、あまたのBL本が売買されている、池袋は乙女ロード沿いにございます。
階段を降りると、えんび服を着た執事がお出迎え。同行した女友達は、さっそく「おかえりなさいませ、お嬢さま」と敬われております。男性の場合は『お坊っちゃま』か『旦那さま』か、呼び方を選べるのですが、お望みならば『お嬢さま』と呼ぶことも可能だとか。お嬢さまと呼ばれ、三輪明宏的な立ち居振る舞いをするのも一興ですが、今宵は無難に、旦那さまを選択です。

「お嬢さま、旦那さま、どうぞこちらへ」と執事にうながされ、入り口をくぐると、店内は、中世ヨーロッパの宮殿のようなゴージャスな内装。きらびやかなシャンデリアがいくつもぶらさがってるのですが、妙にとがったデザインをしているのは、性的メタファーでしょうか。由緒ありげな木目調の家具がずらっと並んでます。新宿のホストクラブ「愛」からバブル要素を引っこ抜いて、上品に仕立てた感じ。メイド喫茶にありがちな、学園祭的ノリとは、一線を画した大人のムードです。

お客さんは30名ほどで、僕以外はすべて女性。
銀色夏生とか村上春樹とかを好んで読みそうな穏やかなタイプが多く、1人客もちらほら。ゴスロリ衣装の方も何人かいましたけど、この空間なら違和感がありません。ゴスロリがしっくりくる場って、この世に存在してたんですね。
いや、しかし、うっかりお茶目心出して、呼び名を「お嬢様」にしてたら、ドエライ事になってました。こんな落ち着いた空間で、「お呼びでしょうか、お嬢様」だなんて言われるのは、羞恥プレイの極みです。

執事は全部で8名ほど。意外なことに平均年齢は結構高めで、20代後半~30代中盤がボリュームゾーン。みなさん、物腰が柔らかく、優しげなオーラを発してます。若いイケメンもいるにはいますが、どうやら、大半は見た目がうんぬんでの採用ではない模様。アゴヒゲをたっぷり蓄えた、50代とおぼしきダンディーな紳士もいますし、執事っぽさを追及していたと思われれる、ガチな人選です。素晴らしい。




●椅子を座るのも、トイレに行くのも、執事が手伝ってくれる! 


「どうぞ、旦那さま、おかけください」と、執事がひいてくれた椅子に腰かけ、まずは、ルールの説明から。
全席禁煙、携帯電話の利用も一切禁止。花粉症の友人は、以前、箱ティッシュを持参し、鼻をチンチンかんでたら「こちらはお店の雰囲気にそぐいませんので」と、箱を回収されたとか。それほど、雰囲気作りに心血注いでるわけです。

ディナータイムは、基本的にコース料理のみ。前菜、メイン2品、デザートに紅茶がついて4200円と、なかなか良いお値段。注文を済ますと、さっそく、紅茶の入ったティーポッドを持ってきてくれ、執事が注いでくれました。

ここで注意が1つ。
コップのお茶を飲み干したとしても、けっして、自分でティーポッドから注いではいけません。
テーブルの上に置いてある、鈴をチリンと鳴らし、執事に注いでもらわなければなりません。お嬢様たるもの、手酌なんて下卑た行為は、絶対NG。それが執事カフェでのルールです。

また、トイレも、1人で勝手には行けません。
鈴を鳴らし、執事に先導してもらわなければならないのです。
そんなルールは知らなかったので、席を立ち、和民感覚で「便所はどこじゃ、便所はどこじゃ」とホールをうろうろしていたら、執事が飛んできて「ベルを鳴らしてくださいね」と優しくたしなめられました。便意をもよおしてすみません、生まれてすみませんと、太宰的罪悪感を抱きつつ、放尿。

トイレから席に戻る際も、執事の先導を待たなければいけません。
なかなか執事に気づいてもらえず、トイレのドアの前で、恥かしそうにモジモジしている女性を見て、気づきました。ああ、これは、お客さん参加型のコントなんだと。
トイレへの先導も、お茶を汲んでもらうのも、かならず執事を呼ばなきゃいけないのはかえって不便で、サービスだとか、優れた接客なんかとかは、まるで別のベクトルです。お客さんに少しばかりの不便を強いてでも、執事らしさを貫くというスタンス。この一見サービスのようでそうでない、微妙にズレた世界観が、コントの世界に紛れてこんでしまったような感覚で、面白いんです。こんな感覚味わえるの、ココだけだもの。
実際、お嬢さまって生き方は、チヤホヤされてはいるものの、自由なんかなくて、不便なものなのかも知れませんし。



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▲執事に「その柄、なんですか?」と疑問を持たれたTシャツ

水や紅茶を入れるタイミングで、執事が話しかけてくれます。
僕には「そのTシャツの柄、何ですか?ずっと気になってたんですよ」との質問が。上の写真が、当日着ていた物です。
イラストを指差しながら、「あ、これはですね、友達が書いた牛の絵でして。あまりにも、気に入ってオリジナルで作ったんです…」とTシャツの由来を話し終え、顔をあげると、そこにもう、執事は居ません。他のテーブルで、水をついでました。「えっ、嘘、いない‥」。優しくしたり、急に突き放したり、こんなにも見事に手綱をさばかれちゃあ、僕が女性なら惚れてます。甘いだけじゃありません、執事カフェ。おそるべしです。

料理は、まあ、普通。コース料理を食べ終え、テーブルで会計を済ますと、出口まで見送ってくれます。
今回は初来店でしたけど、メンバーカードを作り、常連になれば、さまざまな特典が受けられます。たとえば、誕生日には、執事たちから拍手喝采を浴びれるそうです。拍手喝采、浴びたいですよね。
さらに、5回目からは『好きなコースターを選べる』、15回目からは『名前で呼んでくれる』など嬉しい特典が盛りだくさん。「おかえりなさい、茂信」と実家感覚で出迎えてもらうには、あと14回通う必要がありそうです。







「スワロウテイル」の情報
オススメ度:★★★★☆
アクセス:JR「池袋駅」から徒歩10分
住所:東京都豊島区東池袋3-12-12正和ビルB1F
電話:非公開
営業時間:10:30~21:00
定休日:なし
予算:コース料理4200円~
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