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池袋の「素うどん四國屋」は、店頭が物で溢れかえっている。お客さんが勝手に持ってきたもので、すべて売り物だという。「誰が買うのよ」と思いそうなものだが、これが案外売れてるんだな。
 

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周囲に当サイトを運営していることが周知されてここ数年、知人友人から「自分ではとても入れないけれど、気になるから代わりに行ってレポしてくれ」という依頼をしばしば受けるようになった。今回のお店も、池袋勤務の知人から「異様な雰囲気の店があった。レポよろしく」との知らせをもらった。
件の店は、池袋西口ほど近く、歩いて5分のパチンコ換金所すぐ真横に存在している。



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こちらが店の外観。たしかに異様だ。
水が貯めてあるペットボトル、空き缶をぱんぱんに詰め込んだビニール袋、7時間遅れている時計、ジャンルがバラバラな本、そして服。軒先に山積みにされた品々はゴミではなく、れっきとした商品なのだ。訪問時は小雨が降っていたのでカバーがかけられ大人しいものだったが、晴れている日は1人蚤の市状態。



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ほらね、値札がかかってる。なにせ商品なのだから。べージュのかばんは300円也。
店主は75歳のおばあちゃんなのだが、背筋はしゅっと伸び、声もよく通る。彼女曰く「お客さんがいらなくなったものを勝手に持ってくるの。捨てるの勿体無いから売ってんのよ」とのこと。売上は店の収益にするそうだ。



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「これ、誰が買うんだよ」と思いつつ外観を撮影していたら、オシャレな女性が颯爽とやってきて、靴を一足買っていった。前から「いいな」と目星をつけてたらしい。オシャレな女の子ってこんなとこまでファッションアンテナ伸ばしてるのかよ。かなわねえよ。



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店頭をフリーマーケットにしてるのはあくまで副業で、本業はうどん屋さん。のはずなのだが、「素うどん」の看板の真下に、ラーメンの提灯が明々と光っている。



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さらにその下にはいそべ焼きの看板も。なんだったら擬人化までぶちかまして、一番気合をいれて宣伝している。



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うどん、磯辺焼き、しょうゆラーメンが並ぶ奇妙なメニュー表。
この不思議な取り合わせには歴史がある。もともとここのおばちゃんは大塚駅前で、いそべ焼きを売っていたんだって、屋台で。でも、取締まりが厳しくなってきて、やむなく撤退。おもいきってラーメン屋へと転身して12年間営業するも、建物の劣化で取り壊し。6年前にこの店舗に移ってきたのだが、厨房が狭いから、簡単に作れる素うどんをメインに据えたとか。
ファイナルファンタジーの転職システムよろしく、じょじょに調理アビリティーを身につけてって、挙げ句の果てになんの店だか分からない複雑な飯屋へと変貌を遂げたのだ。






5席限定の隠れ家うどん屋

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入り口は幅30cm。来る者の「素うどん食いたし」の覚悟を試すがごとき、狭き門だ。
獣道をくぐり抜けように、強い意思を持ち、するりと店内に侵入する。



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こちらが「素うどん四國屋」の全貌である。この写真1枚で店内の9割を写しきっている。
カウンター3席に小上がり2席。小上がりはテーブル下に、物が詰めこんであるので、足を伸ばすことはできない。尻だけ座って、足は廊下に投げ出すハードボイルドなスタイルで食事をすることになる。



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年期のはいったカウンター。看板メニューの素うどんや磯辺焼きのほかにも、しゅうまいやおむすびもあるようだ。
飲み物メニューはワンカップと缶ビールの2つしかない潔さ。お冷は出てこないので、喉をうるおしたい場合、必然的にアルコールを摂取することとなる。



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タマゴは生です。100円。



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ゆでたまごもあります。100円。



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店内の壁にも、売り物である洋服が所狭しとかけられている。



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腕時計は特価3000円で販売。空腹も満たせて、オシャレにもなれる一挙両得なお店だ。



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ヘアクリップはダイソーのディスプレイごと展示している。これもお客さんが持ってきたのだろうか。



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このコップはゴミ入れ。売り物ではない。



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テーブルのうえには、自由に食べて良いカッパえびせんが置かれている。えびせんつまんで、うどんの到着を待とう。




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本のうえにもエビせんが置かれていた。
しっかし、よくよく見てみると本のラインナップが「ホロコースト後のユダヤ人」とか「アメリカ進出企業の法務マニュアル」などインテリジェンスを感じる。この四國屋、アメリカ進出を睨んでいるのだろうか。



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「トマトとお新香、いる?」とサービスで出してくれた。



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▲天花うどん 500円

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▲素うどん 300円

汁ありの天花うどんは500円、汁なしの素うどんは300円。
素うどんというから、なんの具もはいってないものを想像してたんだけど、ネギやゴマ、ノリがたっぷり乗っかっている。



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かなりの太麺に、特製ダシをかけて食べる。ぶっかけうどんでも醤油うどんでも無い味だが、ふつうに旨い。



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▲いそべ焼き 200円

一番昔っからやってる磯辺焼きも注文してみた。焼かれた餅に醤油をぬって、ノリでくるんで出来上がり。
熱いお餅をハフハフかじっていると、入り口からおっちゃんがにゅっと顔を出し「今日も持ってきたよ~」と、なにやら小物がたくさん入ったビニール袋を置いて、帰っていった。なるほど、こうして「商品」が増えていくのか。







「四國屋」の情報
オススメ度:★★★☆☆
アクセス:池袋駅から徒歩3分
住所:東京都豊島区池袋2-9-6
電話番号:03-5391-4930
営業時間:11:30~翌02:00
定休日:とくになし
予算:素うどん300円
関連サイト:食べログ