
蒲田にある「福竹」は、食べログのお好み焼きカテゴリーで東京1位のお店である。
ただウマイってだけじゃなくって、この店、女将さんがすさまじくパワフルなの。全ての卓を取り仕切り、客は自分で焼くことを許されない。
ひたすらこの店のルールに従い、女将さんの波状攻撃のごときトークを受けいれ、淡々と最高峰のうますぎるお好み焼きを食べるのだ。

▲福竹
蒲田の「福竹」は、食べログのお好み焼きカテゴリーで東京1位だ。正確に言えば、池上線の蓮沼駅が最寄りだけど、まあちょいと利用しにくい路線なので蒲田駅から10分ほど歩くのがいいだろう。
食べログのポイントは3.70点と極めて高評価なのだが、このお店、たんに旨いだけの店じゃあない。

▲注文をとっている名物女将
とにかく女将さんのキャラクターが濃密過ぎる。お好み焼きの焼き方から人生の運用法まで、止まることなく関西弁でまくしたてるのだ。
席に通されるさいに「あ~、いい匂い」とポソリとつぶやいたのを聞き漏らさずに
「それは本音や!あんたは今まで煙臭いお好み焼きしか食べてなかったんやろ!」
と、のっけからハードにツッこんでくる。
タハハと笑って流そうとしたら「普段、いっぺんにお好み焼き、何枚焼くの!?」と質問を畳み掛けてきた。
「え?1枚ずつですかね」と答えたら「もぅ、いいです。喋らないで。全然アカンわ」と叱責をされた。なんでも広い鉄板を活かしきらず1枚ずつ焼くなんて合理的ではない、とのことだ。
注文は『飲み物→バター焼き→お好み焼き』の順番を厳守しなくてはならない。全て食べ終えたあとで、いけそうな腹具合ならば、締めに焼きそばを注文するという流れだ。
順番を間違えようものなら「なに聞いてたん!」とやり直しを食らわせられるぞ。
「鉄板の温度を調整するから、お好み焼きの追加注文は不可能だからね!」とあらかじめ伝えられる。
己の腹の空きっぷりを厳密に判断し、適切な量をピタリと注文しよう。
●はんぺん焼き

▲はんぺんのバター焼き 470円
いきなりの洗礼を受けつつも、なんとか注文を済ませる。
ホッとしたのか便意を催し、小用を足して席に戻ると、はんぺんのバター焼きが卓上に置かれていた。

バターを溶かして、はんぺんを焼いていたら
「だめよー、だめだめ!」
と言いながら、女将さんがすっとんできた。
どうやら、勝手に焼いてはいけないようだ。
「誰が乗っけたの?!」と詰問されたので、私がやりましたと自供した。
開店直後は客が焼いていた時期もあったが「不完全な焼き方でウマいのマズイのと判断されたくない!」と、すべて店側で焼くことにしたそうだ。店内には5卓の席があるが、すべてを女将さんとその娘さんがテキパキ動いて、焼いて回ってる。
生まれたときから通ってる、たった1人の常連さんだけが、己で焼くことを許されてるそうだ。「だめよー、だめだめ!」
と言いながら、女将さんがすっとんできた。
どうやら、勝手に焼いてはいけないようだ。
「誰が乗っけたの?!」と詰問されたので、私がやりましたと自供した。
開店直後は客が焼いていた時期もあったが「不完全な焼き方でウマいのマズイのと判断されたくない!」と、すべて店側で焼くことにしたそうだ。店内には5卓の席があるが、すべてを女将さんとその娘さんがテキパキ動いて、焼いて回ってる。

ひとしきり注意をして「はー、言いたいこと全部言った!今夜も良く寝れる!」と、にこやかに去っていく女将さん。代わって、娘さんがはんぺんを焼きはじめた。目にもとまらぬ早業で2本のコテを操るぞ。

押し出しの強い女将さんとは打って変わって、娘さんは気配り上手で優しげな方。
「いつもあんな調子なんですよ。疲れちゃうでしょ、すみませんねえ」とフォローをいれる。ボケとツッコミといった感じで、2人のコンビネーションでバランスを保っているようだ。
「隠し包丁が見えてきたら、焼けた合図です」「ほら、半分に切ると煙が出るでしょ?食べ頃ですよ。」と逐一、状況解説してくれる。

はんぺん焼きには食べ方があって
まずはそのまま食べる→タレをつけて食べる→マヨネーズで食べる
の3段階に分かれている。

そのまま食べてもフカフカしてて美味しいのだが、特筆すべきはマヨネーズ食い。
鉄板にマヨネーズをたらして

青のりをふる。

よく混ぜて

はんぺんに両面にまぶして、いただきます。
焼けたマヨネーズの香ばしい匂いがたちこめて、絶品だ。
はんぺん焼き1つとっても、これだけのこだわりと食べ方の工夫をしてるってんだから、凄い。
「煙が出るし、鉄板の温度が変わっちゃう」からと、鉄板についたカスや焦げは、少しも許さず、頻繁に取りのぞいていた。本当に仕事が細かくて、頭が下がる。
●お好み焼き


▲左:ふくたけ天(1550円) 右:えび天(860円)
お次は、本題のお好み焼きだ。
記事の都合上、お次と言ってるが、実際ははんぺんと同時に焼いている。
「空きスペースを計算しつつ、温度変化を考慮しつつ焼く!料理は科学!」と言っていた。
記事の都合上、お次と言ってるが、実際ははんぺんと同時に焼いている。
「空きスペースを計算しつつ、温度変化を考慮しつつ焼く!料理は科学!」と言っていた。
お好み焼きはほとんどキャベツだ。普段食べてるものとはまるで違う。
ボウルのなかで手早くかき混ぜ、鉄板に広げ、厚みのある円形へと丁寧に形を整える。
その後、きっちり10分間待つ。
「いま、18時17分だから、あそこの時計で27分になったら呼んで!」
と女将さんは別のテーブルに行ってしまった。時間をはかってお知らせするのが、客の仕事だ。
キャベツで内部を蒸し焼きにしているので、ヘラで抑えつけたり、引っくり返したりしては絶対にダメ。ひたすら待つだけ。
ボウルのなかで手早くかき混ぜ、鉄板に広げ、厚みのある円形へと丁寧に形を整える。
その後、きっちり10分間待つ。
「いま、18時17分だから、あそこの時計で27分になったら呼んで!」
と女将さんは別のテーブルに行ってしまった。時間をはかってお知らせするのが、客の仕事だ。
キャベツで内部を蒸し焼きにしているので、ヘラで抑えつけたり、引っくり返したりしては絶対にダメ。ひたすら待つだけ。

時間になったら、女将を呼ぶ。
裏返して「べりーぐっど!!」と叫んでいた。
ちょっと焦げているようにも思えるが、女将さんいわく、これでちょうどいいそうだ。
「反対側は7分間焼く!34分になったら呼んで!」
と、これまた厳密に時間指定されるぞ。
「はい!呼ばなきゃ叱られちゃいますもんね」と言ったら「叱ってるわけじゃないよ。機嫌がいいから喋ってるの!嫌な客の席には行かないもん!」と笑顔で答えていた。

▲青のり&かつお節のケース(真ん中の細長いやつ)は鉄板から遠ざけるが吉
両面焼けたら、ソースをぬって、かつお節と青のりをかけたら、完成だ。
「あ、青のりのケースが鉄板に近づいてる!熱くなって、あたしがヤケドしちゃう!娘がやったのは分かってけど、それに気づいて遠ざけといてくれると、良い客だよ!」と言われた。ケースの位置まで逐一把握してるのか・・・、凄すぎるだろ。
あ、ちなみに「さすがに無茶だよ!」って厳しい要求をするときなんかは、言いはなった後にフフッと照れ笑いをする。この強烈キャラは、たぶんに客を楽しませるための演出なのだろう。

出来上がったお好み焼きを取り分けてくれた。なんてキレイな彩りだろう。

断面を見てもらえば分かると思うんだけど、尋常じゃなく中がフッカフカ。山芋をあまり入れずに、空気を含ませて、ふんわりさせているとのこと。表面のカリカリした食感と、中のフワフワな食感のマッチングは、まるでフランス菓子のカヌレのよう。このカリカリ感を出すために、あえてちょっぴり焦がしたのだろう。
厚みもあるし、サイズもデカいが、ほとんどキャベツなのでサラダ感覚でツルッと食べられちゃう。
厚みもあるし、サイズもデカいが、ほとんどキャベツなのでサラダ感覚でツルッと食べられちゃう。
こんな食感のお好み焼き、食べたことがない。お好み焼きというか『ふくたけ焼き』としか表現できない代物だ。
●ウインナー&ピーマン

お好み焼きを食べ終えたら、お次はウインナー&ピーマンだ。
さきほどの反省を活かし、まったく手をつけず待ちの一手だ。

5分ほどしたら「遅くなってごめんなさいねー」と娘さんがやってきて、猛烈な勢いでウインナーを焼きはじめた。
やってきたのが娘さんのほうだと、ひと休み出来るのでホッとする。

「ピーマンは薄皮が剥がれるから、ひっくり返さずにコテでギュッと潰すんです」
と独特の焼き方を披露してくれた。
ほんとこの店、1つ1つの動作にワケがあるし、それを説明してくれるから面白い。理にそぐわないことはしないという、徹底した完璧主義の店なのだ。
パシャパシャ写真を撮っていたら
「そんなに撮られて、ピーマンがコンパニオンみたいですね」
と笑われた。
と独特の焼き方を披露してくれた。
ほんとこの店、1つ1つの動作にワケがあるし、それを説明してくれるから面白い。理にそぐわないことはしないという、徹底した完璧主義の店なのだ。
パシャパシャ写真を撮っていたら
「そんなに撮られて、ピーマンがコンパニオンみたいですね」
と笑われた。

ウインナー&ピーマン(この店では『ウインピ』と略す)にも、もちろん食べ方がある。
まずはウインナーをそのまま→ウインナーをタレにつけて→ピーマンにウインナー乗せて
の順番だ。ピーマンもウインナーを巻きやすいようにカットされている。

▲中小企業秘密のタレ
「中小企業秘密のタレ」と名付けられたタレに、ちょんちょんっとつけていただく。
ピーマンに苦味がなく、パリパリとしていた。
●ブタ焼きそば

▲ぶたそば 900円
まだイケそうな腹具合だったので、締めに豚そば1人前を注文。
野菜がどっさり積まれた、ボリューム満点の焼きそばだ。

女将さんが手際よく野菜を炒めながら
「両親のどっちかがめんどくさがりじゃない?」「あなた、変なこだわり持ってるでしょ?」「O型?」
などと性格分析をはじめてきた。
今までの2時間の反応をもとに判断しているそうだ。
「両親のどっちかがめんどくさがりじゃない?」「あなた、変なこだわり持ってるでしょ?」「O型?」
などと性格分析をはじめてきた。
今までの2時間の反応をもとに判断しているそうだ。
「酔っぱらいは味が判断できないから満席ですって追い出すよ!」「もともとはこんな人間じゃなかった!別人28号!嫁ぎ先と働いてる店のせいで変わった!」「いたれり尽せりやりすぎでしょ!ワンマンショー!」と、おっしゃる通りのワンマンショーを繰り広げていた。

途中で出来る「おせんべい」もよそってくれるよ。

「遠心力!遠心力!」と言いながら、回すようにソースをかける。

かき混ぜて、青のりを振ったら完成だ。
「OK!!べりーぐっど!!」
のかけ声を合図に食べはじめよう。

半分ほど食べたところで「あなた、冒険心ある!?」と唐突な質問をされる。
「冒険心はありまーす」と答えたら、中小企業秘密のタレと七味を混ぜて、味変してくれた。
なにからなにまで理屈の通ったさまを目の当たりにし
「よっぽどお好み焼きがお好きなんですね!」
と尋ねたら
「お好み焼きは嫌い!柔らかいからイヤ!」
と、まさかの返答をされた。
「こんな歯ごたえないもの食べてたらボケるよ!」 と壮大な自己否定をしていた。
自分のやっていることにまでツッコミをいれ、徹底的に理屈を通す。あまりにも筋の通った凄まじい店であった。
「お好み焼きは嫌い!柔らかいからイヤ!」
と、まさかの返答をされた。
「こんな歯ごたえないもの食べてたらボケるよ!」 と壮大な自己否定をしていた。
自分のやっていることにまでツッコミをいれ、徹底的に理屈を通す。あまりにも筋の通った凄まじい店であった。
土日は予約しないと入店できないほどの人気。
かなりのパワーを要するので、元気なときを見計らって予約しよう。
初デートや初対面の人と行くとリスクが高いと思うんで、気の合う仲間と行くのが吉だ!
■「福竹」の情報■
オススメ度:★★★★☆
アクセス:「蒲田駅」から徒歩10分
住所:東京都大田区東矢口1-17-11
電話番号:03-3739-4064
営業時間:17:30~23:00
定休日:月
予算:3000円ぐらい
関連サイト:食べログ