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話しには聞くけど、身近にやったことがある人がまるでいないバイト。それが治験。
都市伝説の領域に達している伝説のバイトを、昨年体験してまいりましたので、そのレポートをしたためたいと思う次第でございます。



3度の飯より都市伝説が好きな私にとって、治験バイトは特別な存在。
「寝てるだけで大金ゲットってマジ!?」
「参加者は、ウシジマくんのお客さんみたいなのばっかり!?」
「ほんとは危険な薬物ぶっこまれてるんじゃないの!?」
と、体験談を読んでは、妄想をふくらます日々でございました。

とうとう、わたくし松澤も昨年の中頃に、2泊3日×2回で治験バイトを体験してきたのです。
ばんざ~~い!
ばんざ~~い!!
ばんざ~~い!!!

万歳三唱したところで、どんな塩梅だったのか、その経験を書きましょう。




【STEP1:治験サイトに登録だ!】

まずは治験紹介サイトに登録をする。
なかには紹介料を取られるサイトがあるからご注意を。
募集案件を確認すると、意外とたくさんの治験案件があるのね。

案件によって、年齢や既病歴といった条件指定がされてて
●花粉症をわずらってる20歳~29歳男性
みたいに、けっこう細かい条件が課されている。

私は
●2泊3日入院×2回 鼻から薬を注入 20歳~35歳男性
って条件のやつに応募してみたよ。




【STEP2:検診に行く!】

応募が済んだら、お次は検診。
指定された病院まで出向いて、尿検査・血液検査・問診を行うのだ。
所要時間は2時間くらいで、交通費は支給される。

検診に集まったのは、スポーツでもやってそうな、テニスサークルにでも入ってそうな普通の若者が30人ほど。
平日の真昼間に来れてる人たちだから、大学生が多いのかもね。

この時点ではじめて、どんな薬を投与されるのか、入院後の1日の流れはどんなか、がくわしく説明される。
説明も山場にさしかかったところで、医者の口から
「2回の入院中に、計29回採血をします」
とのセリフが飛び出て、脳が揺れた。


え???


29回採血????


それって29回、注射するってことだよね?????







嫌だ!!!

嫌すぎる!!!!



オバケの次に注射が怖い私としては、まっこと聞き捨てならないセリフである。

頭が真っ白の状態で、以降の説明を流し聞きしていると
「…と、以上の条件でご納得いただけない場合は、いま、辞退されても大丈夫です。辞退される方いますか?」
とのファイナルクエスチョンが。

集まっているのは、体を犠牲にしてでも、金が欲しい成人男性の面々。
もちろん辞退者などいない。
心は完全に折れていたのだが、私も一匹のロンリーウルフ。都会で生き抜く寂しき狼。注射ごときに怖気づいて、辞退を申し出るなど、到底出来たものではない。
他の治験と比べて、29回が多いんだか、少ないんだか分からないし・・・。

というわけで、渋々、承諾書にサインして、検尿して、採血して、問診をした。
検診の結果によって、30人の候補者は、20人へと絞りこまれるそうだ。
もぅこの時点で1回注射されたってのに、落とされたら刺され損じゃあないか…。




【STEP3:入院をする!】

(1)投薬から、怒涛の採血ラッシュ!!

「刺され損でもいい…。あわよくば、検査でひっかかって落ちねえかな…」
との期待もむなしく、モルモット合格の知らせが届く。
…畜生。…怖いよう。

・入院前日は激しい運動や飲酒は控えろ
・当日、コップやスリッパ、歯ブラシセットを持ってきてね
とのお達しも。
ネット環境も整っているとのことなので、上記3点セットにくわえ、ノートパソコンと着替えをカバンに詰めて、病院へと向かった。




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まずは、20人の被験者それぞれにベットが割り振られる。
被験者はもちろん名前じゃなくって、番号で呼ばれるよ。
僕は97番だった。

上着や荷物を置いたら、広間へと集合。
待ち受けるのは、ベテランとおぼしき看護師が4名に医者1名。
製薬会社の人なのだろうか、スーツ姿のビジネスマンも数名控えていた。

これから投薬される薬の説明をうけ、いよいよ治験開始!
20人の被験者の鼻に、液状タイプの薬が、じゃんじゃん投薬されていく!





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投薬が済んだら、即効で採血へ。
どれぐらいのスピードで薬が体をかけめぐっているかを調べる検査だから、とにかくもぅ、血を抜く抜く。
被験者たちは2列に並ばされ、15分に1度注射されるのだ!

採血される時間もきっちり決まっていて
「30秒前!」
「15秒前!」
ってな具合にカウントダウンをされるんだな。
ロケットの打ち上げかよ。

最初の2時間で計8回抜かれたら、そのあとは2時間に1度にペースダウン。
やっと人心地がつける。
この日だけで12回注射されるからね…。
こりゃあ、治験報酬がある程度高額なのも、うなづけるわ。

採血できる太い血管は限られてるから、理想をいえば、左腕・右腕から交互に抜きたいところ。
が、私の場合は2回抜いた時点で、左腕の血管がちょっと腫れてしまい、使用不能に…。
以後、右腕だけが頼りとなった。

血管が細い人は痛みが激しいらしく、終始、悲劇のヒロインのような表情をしている人も。
腕をちらっと見てみたら、採血部にすさまじいアザができている。
そして、彼は、夜をまたずにギブアップした。
いるんだな、リタイヤ者…。



(2)食事中も、休憩中も、ひたすら無言!!

怒涛の採血ラッシュが終われば、ほとんどが自由時間。
各自ベッドに横たわって、自由を桜花するんだけど、んまー、会話がない。
大部屋1つに6人、同世代の若者がいるってのに、とにかく誰も会話をしないのだ。
それぞれスマホをイジったり、本棚にずらーっと用意されてるマンガを読んだりしてるだけ。不気味なほど沈黙。
かくゆう私も、採血のせいか頭痛がするわ、腕も痛いわで、話をする余裕など微塵もない。
持ち込んだノーパソで「あまちゃん」を観るのが精一杯であった。

昼飯のときも、夕飯のときも、黙々とご飯を食べるだけ。
ちなみに食事は、ハンバーグとか野菜とか魚とか、しっかり一人前ある。
条件を揃えるため、1回目の入院時と、2回目の入院時はまったく同じ食事が出されるのだ。
もちろん、食べ物の持ち込みは不可。間食はいっさいできないけど、わりとお腹いっぱいで過ごせるよ。

・共同作業がない
・女性がいない
・すぐ会わなくなる
・治験バイト来てるような人にお互い興味ない
という奇跡の4条件により、奇妙奇天烈なダンマリ空間が生み出され、退院するまで一度たりとも被験者間の会話を目撃しなかった。
私のような内向的人間には、むしろ、ありがたい。



アカギ【通常版】 28 (近代麻雀コミックス)

なお、マンガコーナーに「カイジ」はあったが、「アカギ」はなかった。
さすがに鷲津麻雀は読ませたくなかったのだろう。
賭け金がわりに血を抜いて、死ぬの死なないののストーリーだからね。



(3)消灯時間は22時!!

消灯時間はけっこう早くて22時。
電気が消されるまえに
「最後の尿検査でたんぱく質が出ると、再度お越しいただくことになります。
今夜、たんぱく質がでないようなお気遣いをお願いします。」
という、男の子にだけは理解できる注意がされる。
はい、タンパク質が出ないよう心がけます。




【STEP4:退院する!】

2度にわたる入院を終え、最終日。
最後の採血、そして尿検査をおこない、晴れて退院とあいなった。


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▲採血を経た右腕

私の場合は採血向きの体質らしく、それほど目立った跡はない。
採血が進むに従って、ずーっと頭が痛かったけどね。

もっと雑に扱われるのかと思いきや、看護師さんやお医者さんの対応は、丁寧で優しかった。病室も清潔。
でも、被験者間の触れ合いはゼロ! 

検診1回、2泊3日の入院×2回、採血29回、これで報酬は9万5千円。
高いとみるか、安いとみるかは、あなた次第! 


●平日に何泊もできる確固たる無職っぷり
●じゃんじゃん採血されてもヘッチャラなモルモット体質
の2条件を満たしてる方には、治験オススメです。
なお1度治験やると、4ヶ月はスパンを開けなきゃいけないんだって。