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青森県八戸の「新むつ旅館」は元遊郭だった旅館だ。
築100年を超える重厚な木造建築に泊まれば、これ以上ない旅情を味わえるよ。



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▲かつての小中野新地周辺

青森県八戸市にはかつて「小中野新地」と呼ばれる、遊郭街があった。八戸駅からタクシーで20分ほど、八戸線「陸奥湊駅」からなら歩いても行けるエリアだ。
明治時代から栄えはじめた色街で、最盛期は30軒以上の遊郭に100名を超える芸者さんが在籍していたという。





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昭和中ごろの法律改正で、遊郭街としての機能はすっかり失い、現在は住宅街へと変化しているものの、ところどころに当時を忍ばせる年季のはいった木造建築もまだ残っている。



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関係ないけど家のまえに、もう一つ小さな家が建ってる住居があった。犬小屋だろうか。




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そんなエリアの一角に、歴史を感じる旅館がある。
こちら「新むつ旅館」はかつて遊郭だった建物を、そのまま旅館へと転用しているのだ。築100年を超える、趣ある面構えだ。



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軒下に凝った細工がほどこされている。



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館内に入ると、いきなり目に飛びこんでくるのが、Y字状の階段だ。



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黒光りする木製のてすりから、重厚な印象をうける。



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ロビーに置かれたタンスも、骨董品の領域だ。



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遊郭だった名残りだろうか、壁には大きなお多福や芸者のイラストがかかっている。
「むちゃくちゃ雰囲気ある!!」「最高の宿!!」などと友人と高揚しつつ話していたら、奥から女将さんがやってきた。

元遊郭に泊まるとなると、イメージ的にちょっと怖い人が出てきそうなものだが、新むつ旅館の女将さんは話し好きの人懐っこいおばちゃんだ。建物のレトロ感といい具合にあわさって、ホッと一息落ち着ける。「はるばる来たぜ、八戸!」と心底から旅情を感じられるんだな。



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客間は3つだか4つだか、それほど数はない。
先客はすべてチェックイン済みとあって、我々の到着をもって、玄関を閉めていた。といっても鍵ではなくって、木の棒で突っ張るだけ。



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渡り廊下を歩き、部屋に通してもらった。



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20畳ほどある大きな客間に布団が敷かれている。
いかにも「旦那!」と呼ばれそうな羽織りがかかっていたり



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着物が展示されていたりと、それっぽい演出もされてるよ。



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テーブルには鍋でも置いた跡だろうか、黒い円がくっきり残っていた。



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柱には、折り鶴の形をした釘隠し。



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夕飯を食べようと、部屋から出ると、先客のおじさんと鉢合わせた。
「どこから来たの?ネットで調べたの??」などと質問された。おじさんは仙台からの出張で、ちょくちょくこの宿を利用しているらしい。そのまま立ち話しをしていたら、突如真顔になったおじさんは「親に迷惑をかけているな!?」と言い放ち、自分の部屋へと戻っていった。ほんの数分の雑談で見抜かれてしまった。



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▲食堂

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畳敷きの食堂は、厨房とつながっていて、女将さんたちがせっせと料理をこしらえていた。



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肉に刺身に焼き魚にと、盛りだくさんの夕食だ。味噌汁の具にホタテが3つ入ってたからね。1泊2食付で6825円なことを考えると、えらい割安感だ。



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食事を済ませ、玄関前のロビーでくつろいでいると、「これ見た!?」となにやら分厚い冊子を女将さんが手にとった。



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なにげなくテーブルのうえに置かれていたこちらの冊子、なんと遊郭時代の顧客名簿だそうだ。



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名前、年齢のみならず、目や鼻の形、皮膚の色まで事細かに特徴を書きこむような仕様だ。
ここまで詳細が書かれた名簿はかなり珍しいそうで、民俗学なんかを研究してる学者も見に来るそうだ。ほんの数年前までは原本を置いてたそうなんだけど、「とっても貴重なものだから」と学者さんたちに進言され、いまはコピーに変えたそうだ。








「新むつ旅館」の情報
オススメ度:★★★★☆
アクセス:八戸線「陸奥湊駅」から徒歩15分
住所:青森県八戸市小中野6-20-18
電話番号:0178-22-1736
営業時間:-
定休日:-
予算:2食付6825円(素泊まり4800円)
関連サイト:公式サイト