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先月末、下北半島最高最狂の宿「とびない旅館」に再訪してきた!
今回は怒涛のマンツーマン接客にくわえて、「飛内さんのガイド付き!ほのぼの下北散歩」も実行してきたよ。
いやあ、青森県の先っぽに、半年で2回も行くようになるなんて思いもよらなかったな。



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▲とびない旅館の館主・飛内さん

昨年末に公開して以来、かなりの反響をいただいた、青森県下北半島最狂の宿こと「とびない旅館」の記事
多くの知人友人から「むちゃくちゃ行きたい」「有給取るから連れてって」などの声をもらったし、果ては、そんときの記事が第3回オモコロ杯で受賞したりもした。
友人を連れて行ったらどうなるのか、その反応も見てみたいし、個人的にもまた飛内さんと話したいしで、再訪のチャンスを狙ってたんですが、まぁ、なにぶん遠い。



だって、ここだからね。
青森県の先っぽ、すなわち本州の先端まで行かなきゃならないんだから。
東京から青森駅まで行って、さらにそこからローカル線で2時間ばかり、ほんでもって最寄駅からタクシーに10分乗ってやっとこさ辿りつける宿なもんで、ほいほい行けるようなとこじゃないんです。




はい。行っちゃいました。

6月末に思い切って、友人と4人で再訪しました。会社員の友人たちには有給を取らせました。
念願のとびない旅館アゲインを果たしたわけですが、扉を開けたとたん

「キターーーーーーーっ!!」

と、━━━(゚∀゚).━━━ ←こいつみたいな叫び声をあげながら、飛内さんが飛び出してきた。
その時点で確信しましたね、ああ今夜も長くなるなと。



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▲とびない旅館

前回来たのが12月で雪まみれだったのもあるのか、今回はよりいっそう妖しく輝いて見える。



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入るなり玄関には山積みの大根。
「どうしたんですか、この大量の大根?」と尋ねたら、「差し入れです。朝まで盛りあがりましょう」と言われた。どんなパーティーするつもりだ。



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TV「久保みねヒャダ」で作ったCDとピストルがテーブルに置かれていた。

荷物を置き、リビングに着くなり、なにかを話しはじめる飛内さん。
充電できるコンセントを探したりしてたもんで、最初のほうを聞いてなかったのだが、「遠いところをよく来てくれたね」的な社交辞令をのべてるのと思っていたら

「・・・というわけで、警官も認めてるわけ、下北がいかにオカシイ場所かってね!

と、さっそくの下北ディスであった。
俺ら、まだ、着いて5分もたってないのに。

前回泊まったときは怒涛のマンツーマン接客を朝まで受けたんだけど、話題のほとんどが
1:地元住民たちとまったく反りが合わないという話し
2:政治の話し
3:遺産相続でトラブってて人生が嫌だという話し
の3本立てだったからね。ご健在のようだ。

下北ディス話しのあとは、完全なる真顔で
「いい場所でしょ??素晴らしいでしょ?住みたくなるでしょ??」
と締めるのが定番のパターンである。



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一通り、地元話しに花を咲かせたら、コレクションルームと化した宴会場を見せてもらう。
じつは飛内さん、ホビー系のコレクターとして、かなりのコレクションを有していて、青森県立美術館のワークショップを担当したりもしている。



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自分の作品が掲載されている雑誌を見せ、プラモデルやモデルガンの素晴らしさを語る飛内さん。



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ホビー系雑誌の奥付けに、三菱重工、タミヤなどそうそうたるメンツに囲まれて「旅館とびない本館」と刻まれていた。何者なんだ、とびない旅館。



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「床が抜けそうなので、気をつけて歩いてください!!」と注意をされた。
どう気をつけていいのかも分からず、とりあえずバランスをとりながらノソノソ歩いた。旅館の中ながらSASUKEに出場しているようだ。そそり立つ壁ならぬ、ゆがみ波打つ畳を乗り越えろ。



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飛内さんのプラモ製作部屋は、まだ作ってないプラモの箱が天井まで山積みだ。
「捨てるな辞めるな!」がモットーで、「好きなことを腐らずやり続ければいつかは実る!」と力説していた。趣味のプラモデルをずーっと作りつづけて、美術館で展示されるとこまでいった人が言うんだから説得力ある。
このモットー、個人的にもすげえ共感できるし、飛内さんに会うと「うおー、つべこべ言ってないで書くぞ、作るぞ」って無条件のパワーをもらえるんだよね。



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▲下北の夜は暗い

コレクションルームの見終えたら、お次は旅館の向かいに建つ「下北妖怪ハウス」を見学だ。



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詳細は前回のレポをお読みいただくとして、要は手作りの地獄なわけです、妖怪ハウス。
町おこしの一環として作ったもので、一時期は水木しげる本人がやってきたりと注目を集めたそうなんだけど、なんだかんだ揉めて、今はお蔵入りしているそうだ。
とびない旅館に泊まると、この”なんだかんだ”の部分を、2時間ほどかけて説明してくれるよ。



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「なんで人間は地獄ばっかりくるんだろう。人間っていやだな~~。悪い奴ばっかりで・・・」
などと飛内さんの心境を、鬼やエンマさまが代弁してくれている施設なのだ。



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妖怪ハウスの解説と、なぜ町おこしが失敗したかなどを聞きながら、一通り見てまわると「最後に嫌なもの見せてあげる」と段ボール1箱分のお皿を取り出した。
「町おこしで作った皿を引き取ったんだけど、こんなに余ってるの!いらないよねこの皿、ハハハハハハハハハッ!!!!」とみずから謎のツボを押したようで、大爆笑していた。



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館内の探索を終えたら、あとは夜が更けるまで晩酌タイムだ。
柿ピーをつまみに、ウイスキーをストレートでちびちびやりつつ、飛内さんが出演したテレビを鑑賞する。



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テレビに出ている飛内さんをとびない旅館で飛内さんと観る不思議。
はるか遠くの下北半島で、こんな謎の状況に立たされると、この風景すらも誰かに観られているのではないかと現実味が薄れてくる。

テレビ鑑賞後、4時間ほど世界情勢や政治の話しをたっぷり聞かせてもらったわけだが、今回は人数がたくさんいるのでずいぶん楽なものだ。前回はみっちりマンツーマンだったからね。
眠気も限界に達した深夜2時頃、お開きになった。いや、「なった」などという自然発生的なものではなく、「飛内さん、寝ます!」とはっきり断言し、お開きへと導いた。



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「ちゃんと、夜中に子どもの声が聞こえる部屋を用意しときましたよ!」と通された部屋。
なんでそんなオカルトな部屋を、ちゃんと用意してくれたのだろう。以前泊まったお客さんが、床の下から子どもの声を聞いたんだそうだ。
あまりにもヘトヘト過ぎて、心霊現象が怖いだとか意識する暇もなく、一瞬でオチちゃったけどね。





飛内さんと朝食を作ろう!!

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翌朝7時。
ねぼけまなこで、食堂に行くと
「ジャガイモの皮剥くの手伝って~~~!」
と朝食づくりをサポートすることになった。キャンプ場みたいな旅館だ。

「やだー!東京もんは筆を使ってないのが分かる手つき!絶望!」と特殊なこき下ろし方をされながら、せっせと20個ほどジャガイモをむいていく。
芋すり餅なる郷土料理を作るらしい。



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「芋特有の嫌なところ(おそらく芽のこと)を捨てるんだよ!下北の嫌なところには苦労させられてるんだから!」と下北ディスをまぜながらの指示をうけ、削り器ですりおろしていく。


 
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すりおろしたジャガイモは布に包んで水分を絞り出す。



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友人が絞っていたら「ブチュッ!」と音をあげ、袋が破裂し、イモが飛び散ってしまった。
「すいません、絞り方が悪かったんですかね?」と謝ったら、「ちがうよ!袋が劣化してんだ!」と否定された。袋のせいでした。



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水分を絞ったジャガイモと抽出したデンプンを混ぜこね、団子状にして鍋のなかへ。



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小鯵でダシを取った汁で、しばらく煮込めば完成は間近だ。香ばしい匂いが漂う。



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完成までの間、キッチンをあれこれ見ていたら、セブンイレブンの洗剤があった。
セブンイレブンは意外なことに2015年6月まで青森には出店してなくって、ついこないだ1店舗目が出来たばかり。テレビでも特番が組まれたり、地元青森では騒がれていた。そんな騒ぎに昨夜は「セブンイレブンなんてなにが珍しいんですかね??」とコメントしていたのに、わざわざ買いに行っているではないか。



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新聞を手に戻って来た飛内さんに「セブン行ってるじゃないですかー」とツッコもうと思ったら・・・



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「スパイ嫌疑 死刑宣告」と書かれた一面を広げ、旧ソ連がスパイに対していかに厳しかったかを滔々と語りはじめたので、とてもセブンイレブンの話しをする感じではなくなった。



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調理すること40分。
出来上がった芋すり餅と、ピストル。
ピストルは食卓のみならず、厨房、お風呂、廊下などあらゆるところに置いてある。
「女の子の手を握るより、ピストルのグリップ握るほうが信頼できる」のだそうだ。



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▲スライムやハート状にも出来るよ

じゃが芋しか使ってないのに、食感がモチモチになっていて面白い食べ物だ。アジと醤油で味つけした汁も、ダシが効いててかなりウマい。7時に起きて作った甲斐があるな。
「みんなの家でそれぞれ芋すり餅を作って、その写真を持ってきてもらって、展示会をしたい」と壮大な芋すり展の構想も明かしてくれた。



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▲とびない旅館の朝食

朝食は芋すり餅だけってわけじゃあありませんよ。煮物や焼き魚などたくさん出してくれた。



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とびない旅館の朝食には、見たことも聞いたこともない栄養ドリンクがついてくるのが定番なのだが、今回はスカールDX2000とか言う見たことも聞いたこともない栄養ドリンクが出てきた。
ちなみに前回はイソビタンA2だった。



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朝食を食べる我々をよそに、栄養ドリンクを握りしめたまま、マシンガントークを緩めない飛内さん。
しばらく語りに語ったあとで
「あ、老いた母への薬、すっかり忘れてた!」
と、とても大事なことを思い出して、部屋を飛びだしていった。 





飛内さんに町をガイドしてもらおう!

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ご飯を食べたら、町歩きだ。
じつは、予約の電話のさいに「飛内さんのガイド付きで、下北の町歩きをしてもらえるよう」にお願いしていたのだ。

出かけるさい
「ピストル持ってく?」
と聞かれた。
「持っていきません」と答えた。



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小雨が降るなか、導かれるままに歩く。



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まず連れていかれたのが、こちらの小川。
「なんですか、この川は?」と問うと、「はじめて溺死体を見た川ですよ」だそうだ。



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その後、とびない別館へ。
昔、町が賑わっていたころはこちらも稼働してたんだが、いまは荷物置き場になっているという。
ちなみに旅館の前を通る道路は「裁判で所有権を確定させた」んだとか。とびない散歩において「裁判」は最頻出ワードである。



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こんな看板が出してたんですね。
怒涛のマンツーマン接客は「実家のようなおもてなし!」がコンセプトだったとは知らなかった。すごい実家だな。



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「あれはフリー素材を改造したキャラクターですよ!」などと看板の解説などを受けつつ



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歓楽街に辿りついた。
ものすごい数のスナックや飲み屋がびっしり入っていて、今もなお営業してるところが多いそうだ。いまはもう人口自体が少なくなったので活気がなくなったが、昭和の半ばまでは、下北半島の歓楽街を一手に担っていたエリアなんだとか。
通り過ぎる人すらほとんどいないような町だったので、こんなとこがあるなんて驚いたね。



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スラムダンクみたいなスナックもあった。
また再訪したさいは、この辺のお店にも立ち寄ってみたいな。

小一時間の散歩を終え、宿に辿りつくと、時間は12時過ぎ。
「じゃあ、そろそろ行きますね。なにかとありがとうございました!!」と申し出ると「あ、行くの?宿代貰ってさようなら」と、ドライな一面を見せられてバイバイした。
朝飯込みで5500円。今回もまたとんでもねえ濃度の一夜だった。



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まだ起きたばかり、真っ昼間だというのに、帰りのタクシーで爆睡する友人たち。どうやらエネルギーを使い果たしたようだ。

とにもかくにも他では経験できない濃密な時間を味わえる「とびない旅館」。
マジでわざわざ下北半島まで行く価値ありまっせ!







「とびない旅館」の情報
オススメ度:★★★★★
アクセス:JR大湊線「下北駅」からタクシーで10分
住所:青森県むつ市田名部町8-6
電話番号:0175-22-3815
営業時間:-
定休日:とくになし
予算:2食付き1泊6500円
関連サイト:前回のレポート