
カプセルの所有者からのお招きで「中銀カプセルタワービル」に1泊してまいりました!
黒川紀章の名建築で、カプセル1つ1つが部屋になっている。ちょうど良いちっこさで、妙に落ち着く空間であった。
今年2月に「死ぬまでに東京でやりたい50のこと
つい先月、出版元である青月社から、願ってもない依頼がきたのです。
「中銀カプセルタワービルに1泊して、そのレポートを書いてくれないか?」と。
中銀ビルといえば、黒川紀章の代表的な建築物で、取りかえ可能なカプセル状の部屋を数十個くっつけた異形のマンションだ。
住居用マンションなので、泊まるどころか、普通は中にすら入れないスポット。渡りに舟だと、即効で「やります」と返事をした。
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10月31日に発売したばかりの↑この本に、レポート記事は載ってるよ。
内部の写真だけじゃなくて、実際に住んでる住民たちのインタビューも豊富。「あ~、こういう風に暮らしてるのか」と中銀カプセルタワービルが身近に感じられる内容になっている。


新橋駅から歩いて6分、銀座へも10分程度でいける場所だ。高速道路のある大通り沿いに建っている。
中央に2つ立っている柱のようなものに、カプセル(部屋)を1つ1つ取りつけている。カプセルを外せば、取り換えが可能。人間の細胞のように、新陳代謝(メタボリズム)できる建物ということで、メタボリズム建築と呼ばれている。
とはいえ、実際には1度もカプセルは取り換えられておらず、すべての部屋が建築当時からそのまんま。1972年竣工なので、築43年だ。
かなりガタが来てることもあって、建て替えようという意見も出てきているのだが、文化財として残したいという反論もまた湧きだして、「建て替えたい住民&管理会社」と「文化遺産として残したい住民」で議論がつづいているような状態だ。
世界的に有名な建築とあって、カメラ片手に周囲をうろうろしている外国人観光客が何人もいる。
が、ビル入り口には「見学できません」「ホテルではありません。マンションです」と張り紙されていて、なかには入れない。エントランスロビーは意外なほど落ち着いた作り。扉を開けて、まっすぐその先にビルの管理人が座っているが、警戒の目を光らせるでもなく、まったりしている。
が、ビル入り口には「見学できません」「ホテルではありません。マンションです」と張り紙されていて、なかには入れない。エントランスロビーは意外なほど落ち着いた作り。扉を開けて、まっすぐその先にビルの管理人が座っているが、警戒の目を光らせるでもなく、まったりしている。
●カプセルの内部はなんとも落ち着く狭さだった!

▲玄関はない。扉のまえで靴を脱ぐ。
中銀ビルは13階建てで、エレベーターも設置されている。
この日は中銀カプセルタワービル保存・再生プロジェクト代表の前田さんが所有している1室に泊まらせてもらうことになっていた。
前田さんは9部屋も所有しているうえに、部屋の修繕も自力で行っているそうだ。

▲なんともちょうどいいサイズ。

▲中銀でパソコン作業をすると「夜明けのヨガ」みたいなムードになる
カプセル内部はmなんともちょうど良いちっこさ。
小さいころは意味もなく、押し入れや段ボールに入っていたし、大人になってもマンガ喫茶の個室やカプセルホテルに好んで泊まる。そんな狭いところ好きの私としては、心から落ち着くサイズ感だ。
畳でいえば8畳のワンルームってとこかな。
事前に「寝袋を持ってきてください」と言われていた。
なぜ寝袋が必要なのか、ベッドに他人が眠ることに抵抗でもあるのかなと思っていたが、なんのことはない、部屋の中はがらんどうだったのだ。
ベッドもなければ、家具もない。
このカプセルは、前田さんが普段使っていないのだそうだ。

▲備えつけのエアコンは機能停止している
真ん丸な窓がついているが、仕様上、開けることはできない。
備えつけのエアコンも稼働できないので、夏の熱いさかりや冬の寒い日は、入り口ドアを開けっ放しにして換気をするか、エアコンを新しく取りつけて温度調節するんだとか。
なぜ寝袋が必要なのか、ベッドに他人が眠ることに抵抗でもあるのかなと思っていたが、なんのことはない、部屋の中はがらんどうだったのだ。
ベッドもなければ、家具もない。
このカプセルは、前田さんが普段使っていないのだそうだ。

▲備えつけのエアコンは機能停止している
真ん丸な窓がついているが、仕様上、開けることはできない。
備えつけのエアコンも稼働できないので、夏の熱いさかりや冬の寒い日は、入り口ドアを開けっ放しにして換気をするか、エアコンを新しく取りつけて温度調節するんだとか。

▲40年前の建築にもかかわらず、未来感のあるユニットバス入り口

▲大人1人入るのがやっとのユニットバス
玄関やキッチンはないけれど、ユニットバスはついている。便所の水を流すボタンはけっこう堅くて、空手家気分で掌底を喰らわし、水を流す。
ハイセンスで近未来的なイメージが先行していたが、実際入室してみると、「築43年のマンション」という側面が顔をのぞかせて、なんだかすごく愛着が湧いてきた。
「世界的に有名な建築物」という高嶺の花が、リアルに住んでみたい可愛げのある生活空間に感じられる。
「世界的に有名な建築物」という高嶺の花が、リアルに住んでみたい可愛げのある生活空間に感じられる。
もっとビル内部を見てみようじゃないかと、エレベーターで最上階まで上がり、階段で1階までくだってみると、廊下にちらほら住民の私物がはみだしている。
限られたスペースには収納設備もないので、アメーバのようにプライベートが外へと漏れ出ているのだ。
限られたスペースには収納設備もないので、アメーバのようにプライベートが外へと漏れ出ているのだ。
扉前に大量のスニーカーが積まれてる部屋があれば、折り畳み自転車が2台も3台も置かれている部屋もある。なかにはダイバースーツをドアノブにひっかけ、干してる部屋もあった。「どこからか話し声が聞こえるな」と思ったら、ドアを開けっ放しで商談をしている。エアコンを設置していない部屋は、夏の暑さをしのぐため、ドアを開け、すだれをかけて目隠しをしている。
プライベートな空間と共有空間の境目がやんわりしているこの感じ、すごくアジア的。東南アジアの路地でも歩いてるような雰囲気だ。
●飯を食おう

▲駐車場をぐんぐん歩くと・・・

▲中華料理屋「帝里加」がある
中銀ビルを探索して、小腹が空いたところで、ビル住人たちが足しげく通うという中華料理屋「帝里加」に行ってみた。キッチンがないので、必然、外食かコンビニ飯になるわけだ。
この中華料理屋、立地がだいぶ変わっていて、地下駐車場の片隅にある。中銀ビル目の前にある階段をくだれば、乗用車やオートバイにならんで、店が開いているのだ。
たとえばランチなら、ご飯に主菜、おかずが2品もついて580円。
駐車場の中という立地上、アルコールは提供をしてないが、ソフトドリンクなら持込み自由。銀座とは思えないリーズナブルなお店で、住人同士が「話しでもしながらちょっとご飯を」というさいにヘビーユーズされるとか。
駐車場の中という立地上、アルコールは提供をしてないが、ソフトドリンクなら持込み自由。銀座とは思えないリーズナブルなお店で、住人同士が「話しでもしながらちょっとご飯を」というさいにヘビーユーズされるとか。
●お風呂に入ろう

▲1階に温水の使えるシャワーブースもある。海の家感覚。

ビル全体の給湯器が壊れていて、部屋のシャワーはお湯が出ない。
というわけで、シャワーを浴びたい場合は1階共有スペースにある、シャワーブースを使うのだ。コンテナの中に作られたシャワーブースは海の家感覚で開放感があるよ。
↑
まあシャワーブースでさらっと浴びても良かったんだけど、この日は住民のかたにおススメされた「金春湯」にやってきた。
中銀ビルから歩いて10分ほどの銭湯で、1863年開業の老舗だ。ギャラリーや割烹がならぶ小ぎれいな通りに、とつじょ現れるので、そこだけ異次元のよう。鯉の装飾がほどこされたタイル絵を眺めながら、ゆったり湯に浸かって最高だったな。
●寝よう!

▲窓のふちで寝るのは無理だった
夜12時を過ぎても、窓の向こうにあるオフィスビルは、ちらほらと明かりが点いている。道路の交通量もあまり減っていない。あまり静かすぎるより、ちょっと物音がするぐらいのほうが落ち着く私としては、絶好の就寝環境といえる。
というわけで、シャワーを浴びたい場合は1階共有スペースにある、シャワーブースを使うのだ。コンテナの中に作られたシャワーブースは海の家感覚で開放感があるよ。
シャワーのお湯が出ねえから、銀座の真っ只中にある「金春湯」に来た。ここだけポッカリ異空間。鯉のタイルがいいんだな。 pic.twitter.com/aAJQzZH2B2
— 松澤茂信 (@matsuzawa_s) 2015, 8月 6
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まあシャワーブースでさらっと浴びても良かったんだけど、この日は住民のかたにおススメされた「金春湯」にやってきた。
中銀ビルから歩いて10分ほどの銭湯で、1863年開業の老舗だ。ギャラリーや割烹がならぶ小ぎれいな通りに、とつじょ現れるので、そこだけ異次元のよう。鯉の装飾がほどこされたタイル絵を眺めながら、ゆったり湯に浸かって最高だったな。
●寝よう!

▲窓のふちで寝るのは無理だった
夜12時を過ぎても、窓の向こうにあるオフィスビルは、ちらほらと明かりが点いている。道路の交通量もあまり減っていない。あまり静かすぎるより、ちょっと物音がするぐらいのほうが落ち着く私としては、絶好の就寝環境といえる。
なにもない部屋でどうやって寝るか試行錯誤していたら、「evian」が枕になることを発見した。 pic.twitter.com/VITKELrNKi
— 松澤茂信 (@matsuzawa_s) 2015, 8月 6
夜中、必ず1度はトイレに立つわけだけど、歩いて5秒で用をたせるのも好都合だ。寝袋にもぐって、空のペットボトルを枕にして眠りについた。
部屋はきわめてシンプルでちっこいけれど、中華飯店「帝里加」や銭湯「金春湯」といった、地域のお店で生活を補完しながら、銀座の町全体で暮らす。
中銀ビルを借りるとすれば、そんなひらけた生活が送れるだろうな。
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もっとくわしく中銀ビルを知りたい方は、こちらの本をどうぞ~。
■「中銀カプセルタワービル」の情報■
オススメ度:★★★★☆
アクセス:新橋駅から徒歩7分
住所:東京都中央区銀座8丁目4-6銀座中銀ビル
電話番号:
営業時間:
定休日:
予算:
関連サイト:naverまとめ