
「まるで廃墟のような温泉」として名高い栃木県那須塩原の『老松温泉』に行ってきた。
ネットでの事前情報がなかったら、絶対に営業中だとはおもえない凄まじすぎるビジュアルだった。

▲那須の珍湯、老松温泉
栃木県の那須塩原に、廃墟やボロ宿好きの心を打ちぬく温泉があると評判なので、行ってみた。
リゾート地の那須塩原は、週末ともなればカップルや若い家族連れでけっこうにぎわっていて、メインストリートにはいい感じの博物館やテーマパークが並んでいる。
そんな大通りから、ちょっと脇にそれた道をすすむと、「那須の珍湯・老松温泉」と書かれた石看板がたてられている。

駐車場ちかくの壁には、効能などが書かれていた。
独特なフォントに、文字のかすれが重なって、廃墟系温泉の説明書きにピッタリなムードを醸しだしている。

温泉への坂道をあがっていたら、朽ち果てたジープが置き捨てられていた。

どうやらこちらの建物が温泉旅館になっているようだ。
「たしかに年期は入っているけど、廃墟ってほどじゃないよなあ」なんて思いつつ、建物の反対側まで歩を進めると・・・

どえらいことになっていた。

こちら、廃墟ではない。
間違いなく、営業中の温泉なのだ。




建物の3分の1ほどが崩壊していて、引き戸も柱も押しつぶされている。
内部も筒抜けなんだけど、カラーボックスや水槽、布団や消火器などがそのまんま放置されている。
怪獣映画、竜巻映画にでも出てきそうだ。


▲扉には営業情報が書かれた張り紙
事前にネットで営業中であるレポートを読んでいるからまだしも、なにも知らなければ、「さすがにこれはやってないだろう」と諦めて帰っていたかもしれない。それほどのビジュアルインパクトだ。
入湯料は大人500円、子供300円だ。

受付を開けると

障子戸の向こうで、管理人のおじさんがコタツに入っていた。
大人2人であることを伝え、コタツに入ったままのおじさんに入湯料をわたす。「2時間でも3時間でも入ってってください~」と言われた。
「どうして、あんな状態になっちゃったんですか!?」と尋ねたら、「風で壊れたんだよ」とのこと。関東の空っ風が強いって話しはよく耳にするけど、こんなパワーあるんですかね。
●強すぎる硫黄成分で、壁も天井もいいテクスチャーに

階段をくだった地下に、温泉があるんだけど


天井はたわみ、壁紙ははがれて、内装もかなり、いいテクスチャーとなっている。


なんでも温泉成分が強すぎるので直しても直してもおっつかず、もうこのまんまで営業するよう諦めたそうだ。
「テレビも毎年買い替えないとダメになる」とまで書かれているレポートサイトまであるので、よっぽど凄い成分なのだろう。温泉効果がありそうだ。

床もべこべこ。
木目調のシートが敷かれているけど、めちゃくちゃへこんでいる。

突き当りには、洞窟みたいな手彫りの通路まである。
この通路で、温泉棟と受付棟がつながっているようだ。
もう、ほんと、ゲームの世界観ですわ、ここ。
●さすがの名湯!常連客がどんどん来るよ

風呂場は、男湯と女湯にわかれている。

脱衣場にかかった鏡は、スマホの写真加工のように黒い縁取りができていた。これも温泉成分ゆえだろうか。

ドアを開けると、情緒あふれる木の湯船が2つ。湯気がたちこめ、自然光が差しこむなかで入る温泉は最高だ。
湯船は2つあるけれど、手前の湯船しか張っていなかった。

シャワーなどの気の利いた設備はないけれど、それがかえって雰囲気を盛り上げる。
かなり鉄っぽい匂いがする泉質なので、帰りの道中は、体中から鉄棒みたいなスメルを発していた。
ぬる湯なので何十分でも漬かってられる。

▲温泉成分で、湯船の石がエメラルドグリーンになっている
湯船に5分もつかっていると、お客さんがやってきた。
はじめてだという若い男性と、常連っぽいおじさん。私と友人、そして後続客2人の計4人はいったら、足をのばすこともできないぐらいの満杯だ。
裸の大人がこれだけ密集した空間にいることも珍しいので、お互いがお互いを意識はしているものの、深く話しこむわけでもなく、ただなんとなくぼんやりしている。不思議な空気感をあじわった。

温泉の注ぎ口にはコップがおかれ、飲泉ができるようなので、一口飲んでみた。
飲む直前に、鉄っぽい匂いが鼻をつくけど、口に含んでみると、ほとんど無味無臭。意外と抵抗なく飲める。
帰り際、受付前には「いま、男湯は満員だからちょっと待って」と、男性グループとカップル1組がたむろしていた。見た目はかぎりなく廃墟に近いが、地元の常連温泉好きと、テレビやネットを見てやってきた若い層がいっしょくたになって、幅広い客層でにぎわっているようだ。
那須塩原に遊びにいくなら、老松旅館でひとっ風呂浴びるのはおススメですよ。
外も内もすごいインパクトあるから。
◎撮影のほとんど◎
齋藤洋平(insta)
■「老松温泉」の情報■
オススメ度:★★★★☆
アクセス:高速道路「那須IC」から車で20分ぐらい
住所:栃木県那須郡那須町湯本181
電話番号:
営業時間:8:00~20:00
定休日:年中無休(ということだが、開いてないこともあるとか)
予算:入湯料500円
関連サイト:@nifty温泉