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ここ最近「石っておもしれえなあ~」と感じていたので、浅草橋公会堂で「観賞石展」を見てきた。
4つの石の面白さポイントを発見できたので、ちょっと書いときます。 
 


ここ最近、「もしかして、石っておもしろいんじゃないか?」とひしひし感じている。
1か月ほど前、秋葉原にある『さざれ石美濃坂 東京展示場』に行ってからだ。

展示場と言っても、とある喫茶店チェーンの事務所の一角に、ぽつぽつとさざれ石が置かれていて、事務員の女性が説明してくれるという場所。
君が代でしか触れたことのない「さざれ石」という存在だが、話しを聞いてみると面白いのだ。

「さざれ石」という種類の石があるわけではない。さまざまな種類のちいさな小石が、溶けた石灰岩をつなぎにして、ひと塊の岩になっているものを「さざれ石」という。
だから、一口にさざれ石といっても、その形、その構成要素はバラバラで個性的。

そのなかでも「小石がいい感じに組み合わさって、配置されてるもの」や「面白い形で固まってるもの」が、良いさざれ石とされていて、その価値づけは観るものにゆだねられている。
何に価値を見出すのか、見方によっては単なる石なわけで、価値あるさざれ石となんでもない石っころの差が紙一重で面白い。




愛石 2010年 02月号 [雑誌]
▲月刊「愛石」

「もっとくわしく石を知りたいな」と調べていたら、『愛石』なる石の専門雑誌があることを発見した。世界は広い。
バックナンバーを5冊ほど購入し、読みこむ。どうやら、全国各地に石好きはけっこういるようで、地域地域でグループを作り、河原に石を探しにいったり、展示会を開いたりして、石を楽しんでるようだ。

読みこんでいるうちに「その土地土地の成分が固まって、川に流され削られて、いまこの形がある。石のオリジナリティは、どこに生まれて、どの川と出会うのか。それは、人とおなじ」という風におもえるぐらいには仕上がってきたので、3月5日(土)6日(日)でやっていた浅草公会堂の「観賞石展」に行ってきた。






「鑑賞石展」でおもった、石のおもしろポイント4つ

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▲「石は芸術だ!!」とのキャッチコピー

『鑑賞石展』には数十点の名石がならべられているんだけど、それらをねっとり眺めて「石ってこういうとこが面白いなあ」と4つのポイントが浮かんできたので、ちょっと書いてこうと思う。





1:「見立ての感性」が面白い

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たとえば、この石。
僕なんかがこれに名前をつけるなら「クリープをいれたコーヒー」みたいな名前をつけちゃうと思うんだけど、「玄都峰(げんとほう)」という格調高い銘がつけられていて、「名山をつかさどる一峰であろうか」と説明がふされていた。つまり、山と見立てている。
その石を、なにと捉えるのか。まず見立ての感性が問われる。




■なにかに似てる系

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このへんはとても分かりやすくて、龍。
石についてる白い模様が、龍に見立てられる。



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こちらは「茜富士」と銘うたれた石。
たしかにそう見える。



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これは山々が重なっているようす。



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こちらは、お猿さん。
顔の赤い部分は着色したわけではなくて、自然にこの色がついていたというのだからすごい。
「ふっくらしたお尻の部分が色っぽいでしょ!」と石の持ち主が説明してくれた。



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こちらの石は「うたた寝している貴人」に見立てられていた。頬杖ついて、横になっているところだね。
見立ての完成が磨かれていないと、河原で見つけてもスルーしてしまいそうだ。




■ジオラマ系

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なにかに似ている系は、見立てとしてわりと分かりやすいのだが、より想像力を要するものに、ジオラマ系の石がある。



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「仙狭」と名うたれたこの石は「仙人が棲むかとおもわれるほどの奥深さを感じる石である」と説明がされている。
石の形状を、1つのジオラマと捉え、「ここで仙人が暮らして~、ここに川が流れていて~」みたいな妄想を膨らませる見立てだ。



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激しく隆起した部分と平らな部分、住居となりうる空洞があったり、その下を川が流れていそうなアーチがあったり、1つの石にさまざまな要素が盛りこまれているとジオラマとしての面白さがある。



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半面、こういうモチッとした質感の山が、のっぺり存在してるのもいい。個人的には、この石が一番好きだったなあ。




■テクスチャーや形が面白い系

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見立てというわけじゃないけど、石の質感や形が面白いものもある。
これは梨地の石。ぶつぶつとした小さな穴ぼことその色が、たしかに梨を想起させる。



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キレイなまん丸の石に、ごちょごちょと筋が入ってるのが面白い。



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銘は「流韻」。ゆったりと描かれたカーブは、とても座りごこちのよさそうなベンチみたいで優しい。





2:「コピーセンス」が面白い

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石をなにかに見立てたとして、それにどんな銘をつけるのか、どんな解説をくわえるのか、そこんとこのコピーセンスによって説得力がだいぶ変わってくる。


さきほども出てきた「玄都峰」の説明文でいうと

名山の英姿を司る一峰であろうか。ナス紺の色合いに、あたかも白雲と彩霧が立ち昇る。(中略)玄都とは仙人の住まいする処にて、私は色彩に染まり、幽玄の中に身を置いたのである。

とあった。
ここまで畳みかけられると、もう玄都峰にしかみえない。





3:「作台力」が面白い

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石を支える台が、ひとつひとつその石ごとにオリジナルで作られたもの。
たとえばこの丸っこい石なら、丸っこい台だし



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こういうゴツゴツしてる石ならば、とんがって接地してる部分だけ木の台が削られている。
石の形にあわせて、ジグソーパズルみたいに台まで作っちゃうのが面白い。






4:「石を入手するまでのエピソード」が面白い


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石自体もおもしろいんだけど、それを入手するにいたるエピソードも興味深い。
たいていの石は「河原で見つけ出したもの」か「知人や友人から頼みこんで譲りうけたもの」なんですよね。市場で広く売買されてるようなものじゃあないだけに、苦労して手にいれてて、エピソードが面白い。

たとえばこの石はかなり大きなもので、両手でかかえなきゃ持てないぐらいのデカさなんだけど

旭川に石友3名と探石に行き、川の中から揚げたのですが、急な勾配を持って帰る気になれず、そのまま川岸に置いて帰りました。
それから数か月経ってから、また同じメンバーで行ったところ、そのままあったので気合いを入れて揚げた石です。

とエピソードがつづられていた。
強い執念が感じられて、ものすげえ貴いものに見えてくる。
こういう個人的物語がのっかった物体って好きなんですよねえ。







とまあ、こんな感じで、ますます石っておもしれえなと思った次第。
探石にも行ってみたいし、「愛石」の会員さんのお話しもききたいし、石コレクションを見てみたいですな!!