
ラブホテルに風俗店、大人の案内所がひしめき合う道玄坂エリアにあって、ひときわ重厚な存在感をはなっているのが「名曲喫茶ライオン」だ。
赤くて背の高いベロアのシートに座りながら、超巨大スピーカーから流れるクラシックを聴いてると、異世界にでも迷いこんだ気持ちになってくるぞ。

▲名曲喫茶ライオン
渋谷・道玄坂を一本脇道にそれると、そこはラブホテルに風俗店、大人の案内所がひしめき合うエリア。
そんな東京でも屈指の猥雑なエリアにあってなお、重厚な存在感をはなっているのが、名曲喫茶ライオンである。
石造りの壁にレトロなデザインの窓がはめこまれている。それもそのはず、創業は昭和元年。80年以上営業し続けている老舗喫茶店なのだ。

ここの特徴は、つねに大音響でクラシックが流れていること。だから、名曲喫茶だ。
毎日15時と19時は定時コンサートとして、決まったセットリストが流れるのだが、それ以外の時間はお客さんのリクエスト曲をかけている。
リクエストとは言ってもなんでもありというわけではなく、近現代の音楽など名曲喫茶ライオンの雰囲気にそぐわないものは除く。

店内は撮影NGで、大きな声でのおしゃべりもいけない。
とにかくクラシックをしっかり聴ける環境を大切にしている。
落ち着いた照明で明るすぎない。ダンディーな老紳士がいらっしゃるのかとおもいきや、スタッフさんたちは意外にも若い。
普通の喫茶店のように大きく「いらっしゃいませ!」などと言うこともなく、入店に気づいて、目をあわせ黙礼をしてくれる。そして、近づいてきて「どうぞお好きな席に」と伝えてくれた。
入店すると、視界に飛びこんでくるのが超巨大スピーカー。
2階まで吹き抜けになっていて、1階正面にあるスピーカーは2階の天井までグーンとそびえ立っている。
曲名こそわからないが、空間全体をクラシックが包みこみ、自然と厳粛な心持ちになってくる。直接レコードをかけているのだろうか、たまに聞こえる「チリ…チリ…」というかすれたノイズも気持ちいい。

上図は店内の様子を簡略化して、ペイントでよちよちと描いたもの。
赤くて背の高いベロアのシートが並んでいて、ブルーライトが卓上を照らす。道玄坂の真っただ中とはおもえない、かと言って「ここはどこだ」と問われてもにわかに答えづらい、異世界に迷いこんだみたいな気持ちになる。
観劇のようにシートは同じ方向を向いてる。視界の先にはスピーカー。
横のシートともけっこう距離があるし、前後は背もたれで隠れているので、しばらく座っていると、個室のなかにでもいるようなくつろぎ感がえられる。
場所柄か若者も多いのだが、おしゃべりをする客はまったくいない。コーヒーを飲んだり、ケーキをつまんだりしながら、大音響のクラシックを聴きながら、物思いにでもふけっているお客さんばかり。ときおり気持ちがよくなって、眠っている人もいる。
カップルも何組かいたようだけど、2人して本を読んでいたりと、とても穏やかだ。
渋谷の喧騒に疲れたときに「名曲喫茶ライオン」で、心も体も静めてみてはいかがでしょう。
異世界ですよ、ここ。
■「喫茶ライオン」の情報■
オススメ度:★★★★☆
アクセス:渋谷駅から徒歩7分
住所:東京都渋谷区道玄坂2-19-13
電話番号:03-3461-6858
営業時間:11:00~22:30
定休日:年末年始
予算:ホットコーヒー550円
関連サイト:公式サイト