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先日行われたアメリカ大統領選挙、専門家の予想を超えてまさかの勝利 を収めたドナルド・トランプ氏。
その勝利を予想していたのか、日本唯一のラバーマスク製造販売会社 「オガワスタジオ」が製造したトランプ氏を模したマスクがバカ売れしている。 
時勢に合った商品企画を行い、一点一点丁寧にラバーマスクを作りこむ 職人集団「オガワスタジオ」を取材してきた。 





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【書いた人】

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齋藤洋平

別視点ツアー副代表。観光カメラマン
デザインと写真を担当している。

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 ●すべてはクオリティのため!企画、造形、量産、ぜんぶやる! 
 
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▲埼玉県「大宮駅」から徒歩15分ほどにあるオガワスタジオ

埼玉県さいたま市大宮区の住宅街にレンガ造りの建物がある。 明治38年に創業した日本唯一のラバーマスク製造販売会社「オガワス タジオ」だ。
キャラクターマスクやホラー系マスク、カツラや大仏などおなじみのパ ーティーグッズを企画・製造・販売している。会社の歴史は、ゴム風船 の製造から始まった。



-ラバーマスクはこちらで作ってるんですか? 
 
オガワスタジオ八木原貴裕専務(以下、オ):そうですね。ほぼ一貫生 産。 企画・造形・型作り・量産・ラインでゴム作り・塗装仕上げまで、ここ でやってます。ここが事務所で、後ろに工場があるんです。
彩色の一部は内職さんにお願いしてますが、その内職さんもちゃんと指導して熟練した方です。 社員は26名、内職さんが20名くらいです。 



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▲丁寧に解説をしていただいた八木原貴裕専務。大ヒット作「デッパくん」の生み の親 
 
 
-てっきり中国などで量産されてるものだとおもってました

オ:中国で生産すれば利益は大きくなるんですけど、とたんにクオリテ ィが下がってしまう。 なので、私たちの目が届く場所でやっています。 
 
 
 
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「Mrs.クリントン」「Mr.トランプ」時勢にのった商品開発はお家芸だ 
 
 
-自社生産に強いこだわりがあるんですね 
 
オ:こういうニッチな職業ですから、採用募集かけるとマスクやフィギ ュアなんかが好きな人が集まってくるんですよ。だからこそ、買う人の 立場になって「均一でハイクオリティが当たり前」「粗悪品は許せない」 という考えで生産できてるんでしょうね。 
 
 
-マスク好きが作ってる 
 
オ:そうすると、どんどん求めるクオリティが上がっていきます。 経営面から考えれば、あまり時間をかけすぎてもコストが合わない。な ので、クオリティをあげつつ、スピードを増していく。 そうすれば少人数でも回っていくんです。 
 
 
-そんなにクオリティを重視するのはなぜですか?
 
オ:積極的に海外輸出していた20年くらい前は、正直いってクオリテ ィは低かったんです。 「このまま会社を続けていったら、将来的に未来はないな」とおもい、 従業員や作業工程を見直しました。
「作って売って儲ける」という考えから「お客さんに喜んでもらうこと を第一に」という考えに変わりましたね。 
 
 
-具体的にはどんなテコ入れをしたんですか 
 
オ:例えば、粉です。ゴム製品は型から抜くときに、どうしてもくっつ いてしまうので粉をつけるんですね。 当時は「ゴムマスクかぶると、頭が真っ白になっちゃうんだよ」なんて 声があったんです。 
 

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▲ 石膏型からゴムマスクをとりやすくする「ママカルソ」 
 
 
-あ~、たしかに昔のマスクで白い粉ついてた! 
 
オ:「これではいけない!」と出荷前に水拭きをしました。でも、水拭きは完全に乾燥しなければカビが発生してしまう。
その後、試行錯誤を重ねて、ガムの粉などにも使われる「ママカルソ」 を採用しました。 食品としても安全な材料なので、従業員にも配慮した結果です。 
 
 
-板ガムについてる、あの粉ですか 
 
オ:ママカルソはアルコールで吹き取ります。なので、今のマスクはかぶっても頭が白くなりません。 
 
 
 -そんなところまで考えていたとは… 
 
オ:それだけでなく、型抜き作業時に発生するブツブツのバリ(不要な突起)も、バリすり作業で丁寧に取っています。
こんなふうに、お客さんに喜んでもらうことを一つずつ行うことで、ク オリティをどんどんあげていきました。 まあ、そのぶん、工程が増えてコストがかかってしまうんですけどね (笑)
ただ、そこはぶれずにやっていきます。 
 
 
-ただの宴会グッズというレベルじゃないですね
 
オ:コレクターからは「これ、一万円超えても売れるんじゃないの?」 とよく言われますが、一般の消費者がその価格で買うかというとそうじ ゃない。 コレクターにも認めてもらいつつ、宴会グッズとしてもスッと買っても らえるために価格はなるべく抑えてます。 
 
 
-コレクションとしての需要もあれば、宴会の需要もある
 
オ:宴会用に1000円でマスクを買ったとして、1度きりで捨ててしま う人もいれば、持って帰ってまた次の宴会で使う人もいる。
はたまた、宴会ではなく、部屋に飾る人もいます。 実際、知り合いの家に行ったら、お子さんが部屋中にうちのモンスター 系マスクをかけてくれてたんですよ。その子、女の子ですよ。  
 
 
-大量に部屋に飾ると、独特の匂いがしませんか?
 
オ:ゴムは自然のものなので、老化すると匂いがでる場合があります。中国製などの大量生産品は、輸送に時間がかかるので、店頭にならぶころにはゴムが腐敗してることもあります。
その匂いを消すために、バニラエッセンスで甘い香りづけをしたりしてますね。 ただ、うちの製品は純度が高くて、新しいゴムを使用してますので、少 しゴムの匂いはありますが、腐敗臭はほとんどしません。 
 
 
-ゴムにも鮮度と純度があるんですね!食材の世界みたい。 ところで、ラバーマスクの製造会社は日本に何社かあるんですか? 
 
オ:ウチだけです。今までも出てきてません。 儲からないから誰もやらないんじゃないですか。 




●パティシエからラバーマスク業界に転職した
 
 
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▲ 今まで作ってきたマスクは200~300種以上 


-八木原専務もラバーマスクがお好きで入社されたんですか? 

オ:いえいえ。私が32年前に入社したときは、まったく業界のことを 知らなかったですし、興味がなかったです(笑)
面接のときに、飾ってあったホラー系のラバーマスクを見て「夢に出てきそうでヤダな…」っておもったぐらいですから。 ただ、前職がパティシエをしておりまして。
「見栄えがよく、美味しい完成品を提供する」という考え方が体に染みついていたのかもしれませんね。 
 
 
-なるほど!モノ造りのクオリティ管理でいえば、パティシエ経験はす ごく活きそうですね 
 
オ:入社して営業してると「ホラー系マスクなら、もっと気持ち悪くな きゃいけないんじゃないか?」と改善点が見えてきまして。
入社前はホラー映画やスプラッター映画をぜんぜん見てなかったので すが、仕方なく研究のために見ました。 すると「あれ?このマスク、脳みそ出てるけど、本物の脳みそって血管 もあるし、もっと薄ピンクだよな」と分かりましたね。 
 
 
 
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▲首の骨が見えているゾンビマスク 
 
 
-リアリストですね! 
 
オ:まずデザイナーを呼んで、解剖図鑑を渡しました。 「これ見て、研究して、ぱっと見で『ウッ!気持ち悪い!』っておもわれなきゃ、商品にならないよ」と伝えました。 
 

-解剖図鑑をプレゼントですか 
 
オ:デザイナーも「見返してやる!」と本気になって作ってくるんです。 私も妥協しませんから、上げてきた作品に「なんかゾクッとしないな~」 って。そして、またデザイナーが意地になって作ってくる。
そういうやり取りから、ゾクッとくる気持ち悪い作品を作りだしてきま した。 なかには解剖図鑑を見ながら弁当食べてるデザイナーもいましたね (笑) 
 
 
-そうしてリアルなホラーマスクが完成していったんですね
 
オ:ただ、リアルすぎて店頭に置くのを嫌われました。気持ち悪すぎて お客さんが店に入らなくなってしまったんです。 
 
 
-本末転倒!研究の成果が出すぎましたね
 
 
 
 
●ラバーマスクができるまで

【1】原型を粘土で作る 

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すべての源となる原型製作。
さまざまな資料と想像力で形を作っていく。 
 
 
 
【2】原型から型を取って、石膏型を作る 

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▲歴代の名作の石膏型がズラリ 
 
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▲あの人の石膏型も!

原型を石こうで固め、石膏型を作る。
すべてのマスクの石膏型が、工場内で保管されている。 
 
 
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▲工場に保管されていた「歴代のマスクのマスター」 

1つの石膏型で作れるマスクは70枚ほど。
じょじょに劣化していくので、そのたびに新しい石膏型を作る。
石膏型を作るための「マスクのマスター」も保管されている。 




【3】石膏型にラテックス(ゴム)を流し込む 
 
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回転すしのようにつぎつぎ自動で運ばれてくる石膏型に、ラテックスを流し込んで いく。
この石膏型運びマシーンさえも、オガワスタジオは自作している。 



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しばらくしたら、流しこんだラテックスを外にこぼす。
石膏型の内側にくっついてる部分が、ラバーマスクになる。 
 
 
 
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型から取りだされた、出来たてほやほやのラバーマスクたち。 



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製品によって、ベースのラバー色が違う。 
 
 
 
 
【4】マスクのバリを一つずつ削る 
 
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小さな気泡や不要な突起(バリ)が出来てしまう。 
 
 
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バリを電動ヤスリで削る。
ヤスリにかけすぎると薄くなったり破けてしまうので、微妙な力加減が必要だ。 
 

 
 
【5】塗料を吹きつけ、色をつける 
 
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エアブラシで水性アクリル塗料を吹きかける。 



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全体のトーン、シャドー部分など数工程かけて色をつけていく。 
 


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着彩現場はジャクソン・ポロックの作品のようだ 




【6】細かな仕上げ・検品をおこない、パッケージする 
 
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店頭で見えやすいよう、袋に詰めるさいホチキスでマスクを固定する。 
 


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「コツコツ努力」がキメ台詞のガイコツ先生。
ホラーマスクだが、説明イラストでポップな印象に仕上げている。 





「粗悪品リスト」からルーカスフィルムが認めるクオリ ティへ 
 

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▲スターウォーズ「ヨーダ」(なりきりマスクコレクターズマスク) 
 

●審査はほとんど一発オーケー 

-スターウォーズのマスクもいろいろ発売されてますが、ライセンス商 品は造形についての注文が厳しいんじゃないですか? 
 
オ:監修元のルーカスフィルムに写真を送るんですが、ほぼ一発オーケ ーですよ。 
 
 
-おお、一発オーケーとはスゴイ! 

オ:ライセンス商品は、企画→絵コンテ→造形→色見本→パッケージ→ 梱包済みの完成写真の審査→実物審査、という流れで審査されるのが普通です。
そのあと、一次生産の物にも審査があります。 

 
-やはり入念な審査があるんですね 
 
オ:ただ、ウチの場合は造形→色見本→パッケージ、これだけの審査でOK。それだけパッケージ段階から生産品まで形が崩れない、という信頼をしていただいているということですね。 
 

 
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▲スターウォーズ「チューバッカ」着彩前 
 
 
-徹底したクオリティ管理の賜物ですね 
 
オ:そういうふうになるように今まで頑張ってきたんですよね。 
20年くらい前にスターウォーズ商品を作りたいと申しでたときは、分厚い業者管理ファイルを見せられ、作ることを認められなかった。うちは粗悪品リストに入れられていました。 
 
 
-粗悪品リストからのスタートだったんですか 
 
オ:その後、品質改良をして、マーベルのキャラクターマスクを手がけました。
「このスタジオ、大丈夫だ」という実績を作ったことで、スタ ーウォーズの版権も利用できるようになったんです。 
 
 
 
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 ▲クオリティの高さから様々なライセンス許可を得ている 
 
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「THE JOKER」目元をこすりあげたシーンを再現し、臨場感を演出。こすりあげた着彩案は通らなったので、幻の1枚。 

 
●”ラテックス・マスター”3種のゴムを使い分ける 

-世界中でマスクを売っていますが、日本人とアメリカ人で差がありますか?
 
オ:日本人は、ロボットなどの硬い物体でも、ゴムで硬そうにみせれば買ってくれます。
でも、アメリカ人は硬いものは硬い素材で作られてないと納得してくれ ないんです。たとえばストームトゥルーパー。ゴムで作られてるやつより、プラスチックのがいいや、と。 
 
 
-日本人は想像でおぎなってるんですかね 
 
オ:「そういうものか」と諦めるのは嫌なので、プラスチックに近い硬 いゴムを開発しました。 普通のゴム製と触りくらべてください。 
 

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▲「ストームトゥルーパー」左:硬質ゴム製、右:普通のゴム製。触ると明らか に硬さが違う 
 
 
-うわ、本当に硬いですね!! 

オ:逆に、スーパーラテックスという柔らかいゴムも開発しました。 熱を加えながらゴムの繊維を切ることで、普通のゴムよりも柔らかく伸 びるようにしてあります。 
硬いゴム、普通のゴム、柔らかいゴムの三種類を、モチーフによって使 いわけてるんです。 
 
 
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▲柔らかく伸びるスーパーラテックス製ヨーダ 
 
オ:柔らかいゴムは普通のより、よく伸びますので、ダースモールやヨ ーダなど首元まであるマスクに使います。 普通のゴムだと首元に切りこみ入れなきゃ、頭が入らないんですよ。 柔らかいゴムなら手で伸ばして、頭を入れられますね。 
 
 
-まさか素材から開発しているとは 

オ:ただ、問題が起こりまして…。 スーパーラテックスは柔らかくて伸縮性がすごいんですが、そのうえに塗る塗料がヒビ割れしてしまうんです。伸縮性に耐えられない。 
そこで、スーパーラテックス用の塗料もメーカーと開発しました。 
 
 
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▲ ラテックスの調合は、季節や製品によって変える 
 
 
-え、塗料まで! 
 
オ:その塗料を開発した結果、メーカーは大阪から匠の称号(大阪ものづく り優良企業賞)をもらいましたよ。 ゴムに塗ってもヒビ割れない塗料は、ゴム製パイロンにも応用されてま すね。 
 
 
-あー、町なかにボインボイン動くポールとかパイロンありますね。あれがマスクと繋がってたなんて。 クオリティの追求が、取引業者の潜在能力も引きだしていくんですね! 

オ:自分の会社が生き残るために製品開発してるんですが、取引のある 材料メーカー、卸している問屋さん、お客さんとモノを作りあげていければと思っています。 
 
 
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▲こすれば取れるボディーペイント 
 
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▲腕に塗っても、こするとポロポロはがれる 
 
 
-いまもなにか素材開発されてるんですか?

オ:これ、ボディペイントです。 普通は水で落とさなきゃいけないんですが、これはこすれば取れるんで す。 長年ラテックス(ゴム)を取り扱ってるので、ゴムアレルギーの怖さを よく知っております。
直接肌に塗るものですから、アレルギーがでないよう手術用のゴム手袋の素材を調合してるんです。 ラテックスの伸縮性も利用して、肌が突っ張らないようもしています。
 




アイデアのヒントは「CMとバラエティ番組」 
 
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「 たのむぞ安倍総理」「デラックスなマスク」。似ていれば思い切ってその人 になりきれる。 
 

●ちょんまげカツラで業績がV字回復! 

-もともとはゴム風船を製造をされてたんですよね? 

オ:はい。昔、うつみ宮土理さんの「ロンパールーム」というテレビ番組があって、関連商品「ニコちゃん風船」というのを作っていたのがはじまりでした。 検品のたびに、風船を膨らませて、しぼませてを繰り返していたので、 近所の方からは農場だと勘違いされてたみたいです。 
「ボボボボッ~~~!!!」という音が、四六時中響き渡っていました ので。 
 
 
-牛の鳴き声に聞こえたんですね 

オ:風船ブームが去った後、アメリカのハロウィン向けとヨーロッパのカーニバル向けにマスクを作りだしたんです。 それが、マスク製造のはじまりでしたね。 
 
 
-当時からゾンビなどのホラー系マスクを作ってたんですか? 

オ:いや、もっとクラシックなモンスターです。狼男やフランケンシュタイン、キングコングなどですね。 コンテナ一杯にマスクを詰めて、どんどん輸出してました。 そのときが最盛期で、従業員が80名以上いました。 
 
 
-海外マーケットが主力だったんですか 
 
オ:そうですね。でも、30年くらい前の円高で、いきなり輸出が0になってしまいました。 「どうしよう…」とおもっていたときに「宴会用のカツラを作れない か?」と打診がありまして。
当時は、プラスチックと紙製のちょんまげ しかなく、ウチのゴム製ちょんまげがリアルだということで一気に売れ ました。 海外輸出メインだったのが、完全に国内出荷に切り替わりましたね。 ちょんまげカツラで業績V字回復です。 
 
 
-人生なにが幸いするかわかりませんね 
 
オ:業績回復はしましたが、主力製品がちょんまげしかないのは危ない (笑)
そこで「デッパくん」をはじめとしたモノマネマスクや着ぐるみなど、 製品の幅を広げていきました。 


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▲節分のオニの着ぐるみ(頭部)、サンタクロースと同じ原型を使用している 
 
 
-着ぐるみも作ってるんですか! 
 
オ:「着ぐるみ」という言葉が定着してますけど、一番最初にそう呼びはじめたのは、ウチなんですよ。
「着用ぬいぐるみ」というのが元の言葉だったんですけど、商品名とし ては長いので「着ぐるみ」と呼びました。 商標登録とっておけばよかったな、とつくづくおもいますね(笑) 
 

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▲ 「オニ」にクチバシをつけると「アヒル」になる。 
 
 
●デッパくんが売れすぎて、お客さんに「寝るな!」と怒られた 


-有名人や時の人もマスクにされてますが、どういった意図で制作され たですか? 

オ:ホラーマスクばかりじゃなくて、もっと明るいものを作りたいとお もったんです。
とある大物芸人さんのマスクを作りたいな、と企画した のがきっかけですね。 ただ、そのときは「そんなもの売れない」と言われまして。絶対に売れ る確信があったので、アルバイトのデザイナーを捕まえて、こっそり作ったんです。
それを「デッパくん」として売り出したところ大ヒット。次々と有名人マスクを作るようになりました。 
 

-有名人マスクは特徴をとらえていながらも、ちょっとゆるい造形で大 好きです 

オ:本当はもっと完璧に似ているマスクを作りたいんですけどね。人間の顔をつくるってのは本当に難しいんです。べつにグレーゾーンだから、 あえて似せてないんじゃないです。
でも、最近のものはそっくりになってきてるでしょ。デザイナーの腕が上がってるんですよ。 
 
 
-今までで一番売れた商品はなんですか? 

オ:それは「デッパくん」ですよ。お客さんから「寝るな!」と言われましたから。いくら作っても間に合わなくて、休みの日も自宅に電話がかかってきて「すぐに出社して作れ!」と言われましたから。 
 
 
-猛烈な追いこみ! 

オ:
その次が大仏ですね。「めちゃいけ」で岡村さんがかぶったことでバカ売れしました。一時期は浅草土産の定番にもなりましたよ。 ほんとは浅草寺は大仏じゃなくて、観音様なんですけどね。 
 
 
-外国人が買っていったんですか? 

オ:いえ、修学旅行生なんです。学ラン姿の学生が大仏をかぶると、完 全に岡村さんと同じになれるんです。 
 
 
-完コピできるんですね。大仏マスクを作るという発想はどこからきた んですか? 
 
オ:当時、大仏がくしゃみをする風邪薬のCMがあったんですよ。 「これはマスクにしたら、絶対に売れる!」とピンときました。みんな でこのマスクかぶって並んだら面白いなって。 
 
 
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▲ 横たわる「大仏」 
 
 
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▲より本格的な造形の「本格大仏」もラインナップされている。螺髪が見事! 
 
 
-「売れるな!」というのはカンですか? 
 
オ:カンですね。なにを作ったら世の中にウケるのか、その感覚だけは いつでも持つようにしてます。 だから、ニュース番組よりもCMとかバラエティ番組なんかをよく観ますね。
「面白い!」とおもったら、まずは社内で意見を聞く。そこでつまらな いと言われても、お客さんに電話して確認してみる。 そんな風にして商品化するか決めてます。 
 
 
-ずばり、いま気になってる人は? 

オ:小池都知事ですね。 

 
-へえ~!!そういった新製品企画案は誰でも発案できるんですか? 

オ:いまは誰でも発案できる環境にしています。 マスクの企画もそうですが、細かな作業効率の改善案などを含めて、誰でも書きこめる「なんでもノート」を、社内のいたるところに置いてお ります。 
 
 
-逆に、ぜんぜん売れなかった商品はありますか? 
 
オ:いっぱいありますよ!数えきれないくらいあります。 お笑い芸人さんのマスクを作っても、売り出した時にはもうブームが終わっていたり、スキャンダルを起こしたり。 
 
 
-スピードが大事ですね 

オ:あとは「フランケンシュタインのマスクを、なにか違う方法で売れないかな」と考えて、顔の縫い目にファスナーと取っ手をつけたリュックサック「フランケンバッグ」とかね。 6個だけ売れました(笑) 
 
 
-なにそれ、欲しい! 

オ:ほんとにね、やることが尽きなくて楽しいんですよ! 
 
 
ーラバーマスクの世界がこんなに深いもんだとは知りませんでした。本日はありがとうございました。 
 
 


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【株式会社オガワスタジオ】
住所:埼玉県さいたま市大宮区堀の内町1-86
定休日:土日・祝日
営業時間:午前9時から午後5時(12時から13時は見学できません)
お問い合わせ:048-641-4735
Webサイト:http://ogawastudios.co.jp/ 
 
 
【工場見学について】 
本社の直営店に5名以上で来社→5名分以上の買い物をした場合に見学が可能となります。
また、年内は繁忙期のため、工場見学はお断りしているそうです。