上野駅にある「北山珈琲店」は、コーヒーを飲むためだけの店だ。
●ご来店30分でお開き
●読書、ケイタイ、事務処理、商談、待ち合わせ、おしゃべり固くおことわり
という厳格なルールがある。
尋常ではないほど濃いコーヒーが飲めるぞ。
尋常ではないほど濃いコーヒーが飲めるぞ。
「上野に、コーヒー好きなら一度は行くべき店がある」ときいた。
名前は北山珈琲店。
よそでは絶対飲めないスゴいコーヒーがでてくるそうだ。
コーヒーは好きだけど、違いなんて分かるだろうか…。
半信半疑でその店へとむかう。
線路ぞいに入谷方面へあるいていると、コーヒーの香ばしい匂いがほのかに鼻をついた。
きょろきょろとまわりを見渡しても、北山珈琲のすがたはまだみえない。
Googleマップもだいぶ先をさしている。
目視こそできないものの、その強烈な個性のテリトリーに足をふみいれたということだ。
匂いがしてから30秒。
横断歩道ごしにすがたをあらわした。
黄色い看板でよく目立つ。
ドアにはこんな注意書きがはられている。
●珈琲を飲むためだけの店です
●ご来店30分でお開き
●読書、ケイタイ、事務処理、商談、待ち合わせ、おしゃべり固くおことわり
●ご来店30分でお開き
●読書、ケイタイ、事務処理、商談、待ち合わせ、おしゃべり固くおことわり
うん、ストイック。
こだわりのコーヒー屋はストイックになりがちだけど、群をぬいて制約がきびしい。
30分1本勝負。珈琲だけに集中する店。
こういう独自ルールのある店、好きなんだよなあ。
意をけっして扉をひらくと、焙煎の煙がたちこめて真っ白。
もくもくの煙のなかで、イメージよりずいぶんおだやかそうなご主人さんが座っていた。
「注意書き読んでもらえました?」と確認され
「はい、大丈夫です。そのつもりです」とこたえる。
しばし、店内の片づけを待って入店。
テーブルが2つとカウンター数席でこじんまりとした規模。先客もなく、静かだ。
何年も熟成されたコーヒー豆が、ビンにはいってカウンターにならべられている。
メニューはいちばん安いもので1杯980円、いちばん高いのが4500円。
1杯1000円の「ブラジル」を注文。人生でもっとも高価なコーヒーだ。
メニュー表をながめ、ほどよい緊張感に包まれながら、静かにコーヒーを待つ。
待つこと5分。
運ばれてきたのは、カップにいれられた漆黒の闇。
黒い、とにかく黒い。
「高いお金だしても、コーヒーの違いなんて分かるかな」と不安だったが、見た目だけでも違うとわかる。
このコーヒーが本物の黒だとすれば、いつも飲んでるサンマルクカフェのコーヒーはグレーだ。
ひとくち飲んで、笑ってしまった。
味がどうとか言うまえに、もう、食感から違うのだ。
もったりしていて液体の領域を超えている。液体と個体の中間。
すこしおおげさだけど「ウイダーインゼリーみたい!」だとおもった。
それぐらい濃い。
おそらく一般的な濃度のコーヒーなら、水でうすめて5杯は作れるだろう。
想像をはるかに上回る体験に、びっくりしすぎて「ええっ?ハハハハハ!」と笑ってしまった。
半分ほど飲んだところで、お店がおすすめしている飲み方を実践。
砂糖、ミルクをいれて、甘いコーヒーをたのしむ。
ミルクはキンキンに冷えた容器にはいっている。わざわざ氷を横にそえ、あたたまらないよう配慮されている。
甘くするとだいぶ飲みやすく、普通のコーヒーに近づいた。
5分かけてちびちび飲み干し、即会計。
正味15分で退店した。
ここでしかできない経験がある。完全に異世界のコーヒーワールド。
おすすめですので、ぜひ行ってみてください!
■「北山珈琲店」の情報■
オススメ度:★★★★☆
アクセス:上野駅から徒歩5分
住所:東京都台東区下谷1-5-1
電話番号:-
営業時間:12:00~19:00
定休日:月
予算:珈琲1杯980円~
関連サイト:食べログ