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「みはしのあんみつ」をこよなく愛するライターかとみが、3人の初みはしに立ち会った。


(著者:かとみ





【著者】

かとみ
 (記事一覧 / twitter / サイト「おにノート」

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平日は秘書をしながらマジメな雰囲気を出しています。だいたい甘いもののことを考えています。



「誰かとみはしのあんみつのことを語りたい。」

私はいつもこう思っている。しかしこの願いはほとんど叶わない。
何故なら私の周りには、そもそもあんみつ自体を食べたことのない人が多いからだ。

残念に思う反面、そんな人達をみはしへ連れていったら、どういう反応をするのか前から気になっていた。
初めて出会う美味しさに驚くのだろうか。いや、もしかしたら泣いて感謝されるかもしれない。それは良い、感謝は是非されたい。そしてその流れでみはしのあんみつについて語り合う。最高だ。これはやるしかない。 ということで「あなたの初みはしを見せてくれないか」と題して、3人の知人にみはしへ同伴してもらった。

それでは初めてみはしのあんみつを食べる人々の様子をご覧いただこうと思う。






1人目「理論的に分析する人」


まず1人目は別視点ガイドの松澤さんにお越しいただいた。


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着席後、メニューを眺めながら唸る松澤さん。
確かにこの豊富なバリエーションを前にして、即決断を下すのは不可能だろう。みはしのメニューは初見殺しだ。

しばらく悩んだ後、定番かつ一番人気のメニューに決めたようだった。
まずは基本から入る。なるほど、噂通り彼は理論派のようだ。あんみつを前にどのような分析をするのか気になる。




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左:白玉クリームあんみつ(松澤さん)
右:フルーツクリームみつまめ(私)



まず注目したいのは、スプーンひと振り目の動向だ。どう出るだろうか。
松澤さんはスプーンの上に、バランスよくソフトクリーム、あんこ、寒天、えんどう豆を乗せた。 さすが理論派、分かっておられる。あんみつの肝は何か?そう、シンフォニーだ。彼はそれを理解し、スプーンの上に小さなシンフォニーを作った。

いや、もしかしたら理論などではなく、人間の本能からくる行動なのかもしれない。
とにかく完璧な初手を見せていただいて、私は静かに感動した。 あんみつを食べながら、松澤さんはこんなことを言っていた。
「あんみつはコアがない食べ物だと思っていた。」
「しかし食べてみて、どこがコアなのかという疑問は浮かばなかった。何か1つだけが悪目立ちしていない、マッチングを楽しむ食べ物と確信した。」
「逆に全てがマッチしすぎていて、言われなければあんみつの良さに気が付かないかもしれない。」
あんみつの本質に触れる見事な分析をしていただき、私はただ「そうなんです!」とオウムのように返すだけだ。




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しかしお赤飯を同時に注文したことにより、テーブルの上が食器の大運動会になった。カメラを起動したまま置かれたスマホがその忙しさを物語っている。
みはしの提供スピードに松澤さんの理論も追いつくことは出来なかったようだ。
これは私にとっても良い学びになった。お食事メニューとあんみつは別々に注文しよう。






2人目「欲望のままに動く人」


2人目は甘党の友人を誘ってみた。
友人は甘い物、特に和菓子が大好きで、ういろうを丸々一本かじることもザラらしい。 しかしあんみつはこれまでお店で食べた経験がないとのことで、大の甘党の友人がみはしでどう振る舞うのかとても興味深かった。

着席後、やはりメニューとの睨めっこが始まる。
定番で一番人気のメニューは白玉クリームあんみつだという情報を投げてみると、友人は深くうなづきながら、しかしメニューからは視線を外さずに言った。




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「トッピング…?」

初見でトッピングの存在に気が付くとはさすが甘党である。
トッピングについて説明すると、友人はとんでもないことを提案しだした。
ほうじ茶アイス(期間限定)と抹茶アイス(通年)を同時トッピングすると言うのだ。

ほうじ茶と抹茶を合わせてしまって風味はケンカしないのだろうか。分からない。私は全てのあんみつを網羅したつもりだったが、この組み合わせは完全に盲点だった。
初めてだからこそ出来る突飛な発想に、私はただ舌を巻くしかなかった。




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左:白玉あんみつ、こしあん、ほうじ茶アイス・抹茶アイストッピング(友人)
右:ほうじ茶あんみつ、つぶあん、ほうじ茶アイストッピング(私)



友人の自由な発想に感化されて、私もほうじ茶アイスをダブルで注文してしまった。 今日のみはしは荒れている。

友人は抹茶とほうじ茶色の迷彩柄になったサバイバルあんみつを、とても美味しそうに食べていた。
順調なスプーン運びだったが、ある時友人の手が止まった。求肥を口に含んだ瞬間だ。目をかっと見開きながら、ぼそりとつぶやく。「このうまいものは何だ。」と。




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純白の求肥。誰もが夢中になるもちもちとした弾力、しかしそれはほんの数秒のことで、気が付けば口の中からほどけて消えてしまう儚い存在だ。

そんな求肥を友人もかなり気に入ったようで、「これはトッピングできないのか?」と尋ねてきた。
だから発想よ。天才の発想かよ。
私は思わずメニューのトッピング欄を確認してしまった。これまで100回以上はメニューに目を通している。でも、もしかして。求肥のトッピングは可能なのか賭けたい。胸が高鳴る。

しかしトッピング欄に求肥の記載はなかった。分かっていた、でも落ち込んでしまった。それほどあの柔らかな求肥は人の心を動揺させる。

食べ進めながら友人と「もしも求肥がトッピングできたら」というテーマで夢を語らった。
最終的に「フグのお刺身みたいに並べた求肥を豪快にすくってまとめ食いしたい」という形で落ち着いた。 いつかこの願望が叶うと信じたい。




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※フグ刺し求肥あんみつのイメージ図






3人目「塩気が大好きな人」


3人目は十数年来の付き合いの友人を誘ってみることにした。 気心の知れた友人とみはしへ行けるのは純粋に楽しみだった反面、ひとつ心配だったのは、友人は甘党ではないということ。

「好きなものは?」という質問に「醤油味」と答える、とにかく塩気の人だ。
しかし今回誘ってみたら、本人は意外と乗り気で、事前にメニューの予習までしてくれたようだった。 ちなみに前日にはこのような連絡がきた。




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みはしのお食事系メニューへ興味が一直線。
果たして塩気の友人はあんみつを食べてくれるのか。




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左:ほうじ茶あんみつ、こしあん、白玉トッピング(友人)
右:ほうじ茶あんみつ、つぶあん、栗トッピング(私)



ちゃんとあんみつを注文してくれた。取り越し苦労だったようだ。
塩気の友人はあんみつに一体どんな感想を述べるのだろう。とても興味深い。

友人のひと匙目は、ほうじ茶アイスだった。続いてあんこをスプーンの先端につけひと口。ひと呼吸置き、豆、寒天、白玉…。
恐る恐る「これは何…?」と1つ1つの具材の味を慎重に確かめていた。
その光景は未知との遭遇。好奇心と恐怖の混ざり合う、まるで人類と宇宙人の初コンタクトを見ているようだった。

そんな友人がポロリと感想をこぼした。
「なんかいいね…。なんかいいよね。うん。」
私は素直な言葉に胸を打たれた。 そう、なんかいい。あんみつは「なんかいい」で包まれている。コアのない食べ物だからこそ、このふんわりとした表現がしっくりくる。


未知のあんみつとの遭遇を果たした友人が、他にも気になることをいくつか言っていたので紹介したい。




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「上に乗ってるのは生クリーム?」

どうやらソフトクリームを生クリームだと思っていたらしい。
言われてみれば確かに名前は「クリームあんみつ」である。見た目もパンケーキに添えられた山盛りの生クリームのように見えなくもない。
フォトジェニックの時代ならではのミスリードなのかもしれない。




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「こしあんとつぶあんの中間があったら良くない?こしつぶみたいなの。」

斬新な提案に驚いてしまった。
こしつぶ、アリだろうか。矛盾してないか。こしてるけど粒もあるあんこ。こしてないけど粒もないあんこ。とんちが始まってしまった。混乱してきた。

改めてそれぞれのあんこの魅力を考えてみよう。 こしあんは舌触りが良く、たっぷり含んだ水分がソース的な役割も担っている。
つぶあんは小豆の風味が濃く、小豆の食感は具材のひとつとして良い仕事をしている。 改めて考えてみても、ハイブリットこしつぶがどのような状態なのか想像出来ないが、こういう柔軟な発想が日々のあんみつライフに刺激を与えてくれるに違いない。





三者三様の初みはしの様子を見て

あんみつの選び方や食べ方、思うことも、見事に全員バラバラでとても面白かった。初めてだからこそ可能な斬新な切り口には驚きの連続だったし、新たな学びや発見も多かった。
また、目の前で初みはしの様子を眺めていたら、私自身の初みはしのことを思い出して懐かしかった。 私も初めてみはしへ行った日、一瞬で落ちたんだっけ。セピア色のフルーツクリームあんみつがフラッシュバックして、少しニヤニヤしてしまった。
これからも色んな人の初みはしを見せてもらいたい。ニヤニヤしたい。
ありがとうございました。



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