
福島県只見町には、本にまつわる2つの珍しい店がある。
1つは「本と森を交換してる古本屋」、1つは「1万冊以上の貸本マンガが読める店」だ。


福島の会津地方から只見川沿いに1時間ちょっと南下すると、そこは山と川、黄金色に輝く稲に囲まれた南会津エリアだ。
ザ・日本の田舎というのどかな風景が広がる只見町だが、ここには2つの珍しい本の店がある。
1つは「本と森を交換してくれる古本屋さん」、1つは「1万冊の”貸本”が読めるマンガ喫茶」。
それぞれ紹介していこう。
1つは「本と森を交換してくれる古本屋さん」、1つは「1万冊の”貸本”が読めるマンガ喫茶」。
それぞれ紹介していこう。
福島県猪苗代町1ヶ月住みます会社とは?
猪苗代町の地域おこし協力隊からの依頼を受け、別視点が1ヶ月間会社ごと移住!
猪苗代町を拠点に福島県全域の新たな観光地を発掘する企画だ!
期間:2017年9月12日から10月12日
【登場人物】
別視点代表/国内外巡った珍スポ1000ヶ所超え
別視点副代表/いい写真のためなら手段を選ばない
猪苗代町の地域おこし協力隊からの依頼を受け、別視点が1ヶ月間会社ごと移住!
猪苗代町を拠点に福島県全域の新たな観光地を発掘する企画だ!
期間:2017年9月12日から10月12日
【登場人物】


本と森を交換してくれる古本屋「たもかく」
古本屋「たもかく」があるのは只見線只見駅から2kmのとこ。
上の地図を見てもらえば察しはつくと思うけど、木々に囲まれた自然豊かな立地だ。



ナビに従いこのあたりを走っていると、古本屋がありそうな場所にはとても思えない。
”本”と書かれた立派な看板を見つけたときは「ほんとにあった!」と驚いてしまった。
あったどころか、その規模がまたスゴイ。
コミックや単行本をおさめた「コミたん館」、新書や文庫をおさめた「しんぶん館」、非売品の貴重な本をおさめた「うらない館(売らない館)」などなど、ジャンルごとに大きな倉庫が6つあって、蔵書は100万冊超え。


大きい本、小さい本、縦に横に詰めこんで本棚はすき間がない。テトリスだったらこの本屋、跡形もなく消えている。

タッチ、タッチ、タッチ……。
これだけタッチをされたら、もはやみだらな行為の領域だし、ただでさえ同じ顔に見えるあだち充のキャラクターがゲシュタルト崩壊しそうだ。


マスコットキャラが読んでる本のタイトルは「田舎は苦しい」だ。メッセージを感じてしまう。

▲パンフレットに「本と森を交換します」と書かれてる
変わっているのはその立地や所蔵数だけではない。
なんとこのお店、読み終えた本と森を交換してくれるという。買い取り額1750円ごとに只見の森を1坪くれるのだ。
なぜこのような特異なサービスが始まったのだろうか。
◎「都会にふんだんにある本と田舎にふんだんにある土地。価値観のギャップを交換してる」

▲たもかくの吉津耕一さん
――古本屋がありそうもないところなのに、すごい規模でやってますね。
私はここの生まれ育ちで本が好きだったからね。
どうしても田舎は本が少ないから、都会で本屋行くのが楽しみだったんですよ。70年代は神保町にも良く行きました。あそこも本屋が減って、ゼビオとかアルペンになっていったけどね。
田舎は土地がいくらでもあるから、100万冊とか200万冊でも在庫が置ける。
それだけあれば都会からわざわざ来るだろうと思ったんですよ。
――ああ、ここならいくらでも在庫を置けると。店名の「たもかく」ってどういう意味なんですか?
それだけあれば都会からわざわざ来るだろうと思ったんですよ。
――ああ、ここならいくらでも在庫を置けると。店名の「たもかく」ってどういう意味なんですか?
只見木材加工組合を略してたもかく。
木工の組合を昭和56年からやってたの。私は自宅で民宿やっててフラフラしてたから「アルバイトで入ってくれ」って言われてね。冬は林業やれないから、栃木とか群馬とかから木材を仕入れて売ってるうちに仕事から抜けられなくなりました。
木工の組合を昭和56年からやってたの。私は自宅で民宿やっててフラフラしてたから「アルバイトで入ってくれ」って言われてね。冬は林業やれないから、栃木とか群馬とかから木材を仕入れて売ってるうちに仕事から抜けられなくなりました。
このお店は1994年からで、森と本の交換もそれから始めました。
ちょうどその頃、バブルが崩壊して、田舎暮らしブームが日本中に広がりました。
ブームに乗っかろうにも、猪苗代とか会津若松と競争するとね、このあたりは雪も多いし都市部からも遠いし難しい。
ブームに乗っかろうにも、猪苗代とか会津若松と競争するとね、このあたりは雪も多いし都市部からも遠いし難しい。
でも、本なら人を集めるパワーがある。
「都会に1番ふんだんにある本と、田舎にふんだんにある森を交換したらいいんじゃないか」と思いたったわけです。自分の森があれば愛着が湧きますよね。
交換してる土地はこっから10kmぐらい先の森で、斜面ですね。
――町おこしだったわけですね。

――じっさいもらった森に入れるんですね!
――流れが変わってきてるんですね
――どういう人が土地と本の交換に来るんですか。
本を捨てたくないって気持ちの人ですね。土地を手に入れて経済的満足を得たいなんて人は4分の1もいませんね。
本は紙でしょ。紙は森林で出来てるから、交換するのにちょうど良いんです。
――町おこしだったわけですね。
田舎の人は都会の人に「来てくれ」って言うけど、自分たちが入れたい観光地に来て欲しいだけで、自分の台所はのぞかせたくないし、宝物にも触らせたくない。
当時は土地を手放したくない、よそものが越してくるのはイヤだ、山にも入れたくないってムードがあった。
でも、当の本人はその矛盾に気がついてないし、問題にもなってません。
当時は土地を手放したくない、よそものが越してくるのはイヤだ、山にも入れたくないってムードがあった。
でも、当の本人はその矛盾に気がついてないし、問題にもなってません。
だから、こういう取り組みを始めて、都会の人に森を持ってもらって、山に入ってもいいよって仕組みを作ったんです。
今となってはのべ3万7千人ぐらい、6万坪が所有されてます。

――じっさいもらった森に入れるんですね!
春と秋に山に入って、木の芽やきのこ採りしてました。
最初の10年は300人ぐらい来てたんだけど、段々参加者も減っていった。10人20人となってた頃にリーマンショック、それで原発でしょ。もう、あんまり集まらないですね。最近は株主総会で集まった人とやってます。
――流れが変わってきてるんですね
最初の10年間ぐらいは売り上げも3000万ぐらいあったんですよ。
日本一の収集量って言われてたから、本好きが沖縄とか北海道からもやってきた。
でも、Amazonが定着してからダメですね。私も読みたい本があれば自分の倉庫を探さないでAmazonで探しちゃうもん。うち自身も月で10万ぐらいはAmazonで売ってるね。
――どういう人が土地と本の交換に来るんですか。
本を捨てたくないって気持ちの人ですね。土地を手に入れて経済的満足を得たいなんて人は4分の1もいませんね。
本は紙でしょ。紙は森林で出来てるから、交換するのにちょうど良いんです。
――交換用の森はどうやって増やしてるんですか
森は買ったり交換したりしてる。
地元の人は財産になる杉林の森は持ってたいけど、広葉樹の森は税金かかるからいらないんです。だから、私の農地と交換してもらってます。
広い山を手に入れて、都会の人に提供できればいい。
価値観のギャップを交換してるようなもんだね。
◎タレント本を土地と交換してもらおう

土地との交換用に大量のタレント本を持ってきていた。
藤原紀香「藤原主義」、若槻千夏「マーボー豆腐は飲み物です」、ベッキー「ベッキーの心のとびら」など12冊。
これだけ名著がそろっていれば、さぞかし大量の森をゲットできることだろう。

名残り惜しいが土地のため。手放すことにした。
査定のうえで後日、評価額を郵送してくれるとのこと。1750円で1坪の森と交換となる。

690円だった。
藤原紀香やベッキーの力を借りたが、只見の森1坪にならなかった。
いずれまた藤原紀香のエッセイ本を大量にたずさえて再訪しようと思う。
1万冊の貸本が読める「昭和漫画館 青虫」

さて、お次。
たもかくから徒歩20分の場所にあるのが「昭和漫画館 青虫」だ。
庭に花が咲くカワイイ建物。廃教会だった建物を300万円で購入してリノベーション、2006年オープンした。

マンガ雑誌ガロの刊行元である青林堂と、手塚治虫から1文字ずつ取って「青虫」と命名した。
営業期間は5月~10月末の12時から17時。豪雪エリアなので冬は店主が出稼ぎに出かけていて閉店する。


玄関でスリッパに履き替えて、店内へ。昭和レトロな懐かしい雰囲気で、四方を囲む本棚にはマンガがびっしりつまってる。
1時間500円で、館内の本は読み放題。セルフサービスのお茶やコーヒーも用意されてる。


青虫はたんなるマンガ喫茶ではない。ラインナップが特殊だ。
戦後1950年~60年代に隆盛をきわめた「貸本マンガ」がメインで、なんと1万冊もあるという。
マンガ喫茶に行くと、読んだことはなくても見覚えのあるタイトルが並んでいる。が、ここの所蔵品は見たことも聞いたこともない物ばかりでワクワクする。


雑誌の創刊号コーナーもある。
CanCanやプレイボーイ、少年ジャンプの創刊号が手に取って読めるなんて感激だ!

おもわず読みふけってしまう。このチャンスを逃したら読めない本だらけ。あれもこれもと手に取ってると何時間でもいれるぞ、ここ。
館長さんいわく「1日1人、お客さんが来れば良いほう」とのことだが、来たら来たで長居する。実際、漫画研究会のサークル合宿できて2日間こもってる団体や、マンガの学術研究のため毎年通いつめるアメリカの学者さんもいるそうだ。
◎「酒もタバコもやらず、給料のほとんどを貸本マンガの収集に使った」

▲高野行央館長にお話しをうかがった
――貸本ってはじめて読みました。おもったより古臭くないというか、今読んでも面白いですね!
そういう方のためにも、見たことない本を手にとって読めるようにしたんです。貸本を開架式で読めるのはうちだけ。
閉架式だと知ってないと借りれません。この形式なら作者も題名も知らない人が貸本に出会えますもんね。
存在知らなければ無いのと同じ。貸本の存在を知って、現代のマンガ家は突然変異で出てきたわけじゃないって知って欲しいんですよ。
――当時、貸本屋ってどれぐらいあったんですか?
1950年~60年代が最盛期で、全国に3万軒ほどあったそうです。今、書店が1万2千軒くらいですから、どれだけ多いか分かりますよね。
当時、本は高かったので借りて読むわけです。
うちの近所にもあって、銭湯の帰りによく立ち寄ってました。
――貸本マンガもさぞかしたくさん出てたんでしょうね。
貸本は全体像が掴めないんですよ。
当時は業者じゃないと貸本を買えないわけですけど、貸本屋が潰れたら捨てられちゃいます。
そもそも流通数も少ないうえに、捨てちゃって保存する人も少ないので全体が分からない。国会図書館にも無いものが多いですよ。

――貴重なものだけに貸本って高いんですか?
ピンキリだけど、今なら最低で数千円。どんなに無名タイトルでも3桁じゃ買えません。
一番高価なのは、ストーリー漫画の原点ともいわれてる手塚治虫の「新宝島」ですかね。うちにあるのは再販だけど初版なら数百万円しますよ。
――そんなに!総額いくらぐらい収集に使ったんでしょう。
総額はもう分かりませんね。
横浜で会社員として働き始めた20代半ばから、40年かけて3万冊以上収集しました。
神田とか大阪とか古本屋さんを巡ったり、古本市で目録送ってもらって注文したり。
酒もタバコもギャンブルもやらないで、給料のほとんどを貸本マンガの収集に使いましたね。
――3万冊も!全部読んでるんですか!?
ほとんど読めてません。
絵を集める感覚に近いのかもしれません。「子供見たときのこれ、まだあった!」って手に取って懐かしみたいですよね。

――横浜で働いてたんですよね?なぜ、ここ只見で開いたんですか。
本と森の交換をしてるたもかくさんの影響ですね。
「森の所有者になった都会の人に訪れてほしい。只見を本の町にしたい」って想いに共感しまして。
もともとは横浜の自宅で保管してたんですけど、引っ越し業者に頼んでダンボールで数百箱運んできました。
「昭和漫画館 青虫」の情報
オススメ度:★★★★☆
アクセス:只見線只見駅から徒歩10分
住所: 福島県南会津郡只見町町大字只見田中1085
営業時間:12:00~17:00
定休日:冬季11月~4月は休業(詳細はサイト確認を)
予算:1時間500円
関連サイト:青虫の公式サイト
オススメ度:★★★★☆
アクセス:只見線只見駅から徒歩10分
住所: 福島県南会津郡只見町町大字只見田中1085
営業時間:12:00~17:00
定休日:冬季11月~4月は休業(詳細はサイト確認を)
予算:1時間500円
関連サイト:青虫の公式サイト
まとめ
意外なところにある、意外な本の店。
自然のなかにあるからこそ、余計な邪念を捨てて、落ち着いて本を選べるし読めるなあと思った。
あの「新宝島」も青虫で読めたし、わざわざ出向いた甲斐があった。今度は丸1日時間を取って、片っ端から貸本を読んでみたい。
-------
「福島県猪苗代町一ヶ月住みます会社」やってるよ!

2017年9月12日~10月12日の1ヶ月間!
観光会社「別視点」は福島県猪苗代町に移住してるよ!!
猪苗代を起点にして、福島県を掘って掘って掘りまくり、記事を更新しまくる。
Deapsにも登録したよ

▲こんな感じでスポットの写真・説明が出てくるよ

▲投稿ページのQRコード
「福島県猪苗代町1ヶ月住みます会社」をスポンサードしてくれてるのは、おでかけSNS「Deaps」。
ディープなスポットがたっぷり載ってる、おでかけ情報アプリ!
猪苗代1ヶ月住みます会社の期間中、Deapsにブログには載せてない小ネタをじゃんじゃん投稿してるよ。アプリダウンロードして見てみてね~。

スポンサード by おでかけSNS「Deaps」