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福島県田村市「下里工芸」の箭内隆寿さん(89)は、これまでに1000体以上のコンクリート人形を作ってきた。
まもなく90歳(2017年現在)になる大巨匠だが、「なんでも作れる」を公言し、手を休めることなく今日も作品を作り続けている。





【筆者(文・撮影)】

斎藤ようへい twitter/instagram

 576NPhx9_400x400別視点副代表。写真狂のデザイナー



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福島県田村市「下里工芸」の箭内隆寿(やないたかじ)さん(89)は、元コンクリート製造会社の社長さん。
現役を退いてから趣味で作りはじめたコンクリート人形は、これまでに1000体以上にものぼる。

「コンクリートでなんでも作れる!」を公言し、まもなく90歳の大巨匠だが、今日も手を休めずに作品を作り続けている。




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2015年の夏、福島へ旅行をした。
オブジェ系珍スポが大好きな自分の一番の目的はここ「下里工芸」だった。
到着すると黙々とフクロウ像にセメントを塗りつけている箭内さんを見つけた。いろいろと話を聞こうと思ったが、制作に熱中していて話しかける隙がない。
ただ、本当に作っている姿を見れたことに満足して帰った思い出がある。

その時を含めて3度、下里工芸に訪れたが、いずれも箭内さんは作品を制作中。
まもなく90歳になろうとしている現在も、常に作り続ける生涯現役のクリエイターだ。




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福島県猪苗代町1ヶ月住みます会社とは?

猪苗代町の地域おこし協力隊からの依頼を受け、別視点が1ヶ月間会社ごと移住!
猪苗代町を拠点に福島県全域の新たな観光地を発掘する企画だ!
期間:2017年9月12日から10月12日


【登場人物】

matsuzawa 別視点代表/国内外巡った珍スポ1000ヶ所超え

saito 別視点副代表/いい写真のためなら手段を選ばない






1体目が売れるまで8年かかった


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2mに迫る大きい作品から50cmほどの作品まで、大小様々なかわいいキャラクターたち。



saito

作り始めて何年ですか。



yanai_shimosato

コンクリの仕事やめてから本格的に始めたから、30年くらいかな。



matsuzawa

コンクリート会社の社長だったんですよね。



yanai_shimosato

そう。従業員は5人。
もともと東京の竹中工務店に18歳から22年勤めて、長男だから福島に帰ってきたの。
それからコンクリート屋をはじめて、35年やったね。



saito

コンクリ作品は何体くらい売れたんですか。



yanai_shimosato

1000体以上だな。どんどん手放すから覚えてねえけど。
引退してからも食っていかなきゃいけないから、身近にあったコンクリートで作りはじめたわけ。引退前から毎晩練習してたよ。
1体目が売れるまで8年かかったな。



saito

修練を重ねて、これだけのものが作れるようになったんですね。



yanai_shimosato

人間は努力と根性をすればできないことはねえよ。
同じ手足を持って生まれてきてるんだから、他の人ができることは自分もできるはず。
普通の人は3日やってできなかったらやめちゃう人もいるけど、それじゃだめ。根性がないとね。



matsuzawa

一番最初に売れた作品はなんですか。



yanai_shimosato

ネズミだな。
今作ってるのは中身が発泡スチロールで軽いけど、当時は中身まで全部コンクリート。100㎏ぐらいあるんじゃねえか。かなり重たいよ。




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これがねずみ。
黒いジャケットと赤いパンツが似合う、どこかで見たことあるようなキャラクター。

自力で運べるならタダで持ってって良いそうだが、大人2人がかりでもビクともしなかった。
そのまま持って帰るのなら0円、ペンキの塗り直しを頼むと1000円だ。



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依頼があればなんでも作る。
コンクリート人形などの立体物から、絵でもイラストでもなんでも描く。

コンクリ作品は大きさや難しさによって値段が決まる。
とはいえ、ほとんど6千円~1万円ぐらい。2mサイズの大きな物でも2万円とかそんなもんだ。
手間と材料を考えれば、たいした利益になってなさそうだ。

すさまじい存在感なのに、とにかく安い。
最近は作るそばから、飛ぶように売れていくんだとか。
なかでも熱心なコレクターが4人いて、競うように買い漁っているんだとか。






衝撃のデビュー作「かっぱ村」

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箭内さんのデビュー作であり代表作が「かっぱ村」だ。
下里工芸と同市内の「温泉旅館・花の湯」の隅っこに作られたかっぱ達の楽園。まちおこしの一環だそうだ。
100体以上のかっぱが、楽器を演奏したり、囲碁を指したりして楽しく生活している。




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※現在、かっぱ村は閉園予定。人形の数もまばらで、草もボーボーになっている。

(2013年来訪時のレポ:おじいちゃん1人で作ったコンクリ像が150体超え!「工芸の里かっぱ村」はヘタウマの境地だ!



matsuzawa

かっぱ村を作ったきっかけはなんですか。



yanai_shimosato

ここらへんを「工芸の里」として町おこししようってなったの。
いきなり町おこしは難しいから、賑やかな場所を欲しいねって「かっぱ村」を作ったんだよ。



saito

かっぱ好きなんですか。



yanai_shimosato

簡単に作れるのよ。色もほぼ単色だし。
1日3体作れるから、2か月でカッパ村完成させたよ。
100体以上作ったな。



saito

すげ〜〜〜!!!
1日3体!1つ1mぐらいあるのに!!



yanai_shimosato

ちゃんと1体1体の性格も考えて作ったんだよ。
どれも同じ格好じゃつまらないから、そば食べてたり、囲碁を指してたり。
オーケストラも、楽器を持ってるだけじゃなくて、本当に演奏していくような仕草を考えた。
手を動かしてる時より「どんなの作ろうかな」って考えるのが楽しいし、好きだね。



saito

あ~、性格設定もあるんですね。
だから、それぞれに個性があって魅力的なんだ。




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現在、かっぱ村のかっぱは一体1,000円で購入可。
カッパ村は閉園予定なのですさまじい破格値だ。





注文があれば何でも作る。簡単なことだよ


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▲現役バリバリ稼働中の箭内さんのアトリエ。


saito

コンクリ人形はどうやって作るんですか。



yanai_shimosato

簡単なんだよ。
建築用の発泡スチロールでおおまかな形を作って、コンクリートを塗って、水性ペンキで色をつけるだけ。

発泡スチロールは知り合いの建築会社からタダでもらってる。工事で出た切れっ端やゴミだな。だから安く出来んだよ。



saito

簡単って言っても、そうそう出来ることじゃないですよ!
とにかく箭内さんは造形力はもちろんアイデア力がスゴい。
二つが兼ねそなった作品ですね。




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こんな感じで、まず発泡スチロールで形を作ってからコンクリートを塗る。




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yanai_shimosato

これ、山形のさくらんぼのキャラクター。1.5mあんだよ。ちゃんとキャラクターの使用許諾もらって作ったんだ。

今までで一番大きいのは3.5メートルの怪獣。やっぱり大きいの作るのは楽しいな。注文があればなんでも作るよ。



saito

たとえば僕の等身大人形って作ってもらえます?



yanai_shimosato

できる。町会議員の等身大人形も作った。
12,000円で作れるよ。



matsuzawa

やっす〜〜〜〜〜!!別視点のオフィスに欲しい!!






奥さんを温泉に連れていけ。年上の仲間を持て。


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saito

こうして話し聞いてるときもずーっとなにか作ってますよね。
いったい、いつ起きていつ寝てるんですか。



yanai_shimosato

朝5時半に起きて、寝るのは22時。一日のだいたいはここで作業してる。

若いときは4時間以上寝たことない。
みんな「金がない」って言うけど、働きもしないで金がないなんて当たり前だから。
8時間寝るんだったら4時間削って仕事したらいいのにな。生きてるうちは色々動いたほうがいいよ!

若いときから本業のほかにも2~3の副業やってたんだ。
定時でみんなが帰ってから、骨董屋やってたから。



matsuzawa

そんなに働けない!できれば10時間寝たいっす!
箭内さんってめちゃくちゃ元気ですけど、健康のために運動とかしてるんですか。



yanai_shimosato

べつに何もしてない。



saito

天性の体力!
気力が半端じゃないから元気なのかな。

ぜひ、箭内さんの人生訓を教えてください!



yanai_shimosato

そうだな……。



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一年に一回は奥さんを温泉に連れていくこと!

奥さんあっての男だから。毎日休みなく家事やってくれてるんだから、かならず年1回は3泊ぐらい温泉で休んでもらう。
そういうふうにやってきたし、仲間にもそうしろって言ってる。



saito

うんうん。



yanai_shimosato

年上の仲間を持つこと!

一人の力は限界がある。仲間さえ増やせば、いくらでも金儲けできるんだ。
ただ同じ年代の仲間だけじゃダメ。飲んだり食ったりするのが関の山。

年上の仲間を持つのがいいな。
若い頃から20才も30才も年上の人とばっかり付き合ってきた。
人生の先輩に勝るものはないんだよ。



matsuzawa

言われてみれば、そうですね。意識していこう。



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最後は、石の上にも三年!

始めたら3年はやること。
コンクリート人形作りだしてから8年間売れなかった。
でも止めずに30年やってたら、もう1000体以上売れちゃったんだから!



saito

身に染みる!




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yanai_shimosato

恥さらしで言うんだけど、いまの女房4人目なんだよ。



matsuzawa

え?4人目?



yanai_shimosato

前の女房が亡くなって、今は60の女と住んでんだ。



saito

すごい年下ですね!



yanai_shimosato

25で最初の結婚したんだけど、20才ぐらい年上の人と結婚したの。
さっきも年上の仲間を持てって言っただろ。だから、年上の人と結婚したの。そうすりゃ、誰と話しても絶対負けないよ。
今の女房が年下なのは、私が90で年上がいないだけ。



matsuzawa

徹底してるぜ!






90歳になったら誰もが一目で笑っちゃうのを作りたい


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前回の来訪時、ピンと来た人形に「別視点」と名入れしてもらった。
女豹のポーズで佇むブロンズ美人は、セクシー女優の夏目ナナをモデルにしたそうだ。
どこに夏目ナナ要素があるのだろうか。言われなければ気づけない、いや、言われても気づけない。



yanai_shimosato

夏目ナナの名入れ出来てるよ。6,000円ね。


matsuzawa

こんな良い物、6,000円でいいんですか!?
そもそもなんで夏目ナナ作ったんですか?



yanai_shimosato

大阪の女性から注文されたんだよ。夏目ナナ4体お願いしますって。
まあ、喜んで持って行ったわ。これは試作で作ったヤツ。
日本中から注文あるわ。




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yanai_shimosato

来年3月で90になるんだけどよ、90になったら誰が見ても一目で「アッ!」って笑っちゃうやつを作りてえんだよ。



saito

アイデアは浮かんでるんですか?



yanai_shimosato

誰が見ても笑うんだから、誰も作ったことがない物になるだろうな!



matsuzawasaito

アッって笑いてえ!
また完成した頃に来ます!!




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バタンッ!!


夏目ナナ嬢を連れ帰った。
並走した車はさぞかし不気味だったことだろう。




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現在、別視点オフィスの受付嬢をしてもらってるが、その生々しさにいまだにビビる…。
箭内さんの魂がこもっているからだ。


(2013年来訪時のレポ:おじいちゃん1人で作ったコンクリ像が150体超え!「工芸の里かっぱ村」はヘタウマの境地だ!


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「福島県猪苗代町一ヶ月住みます会社」やってるよ!
 

inawashiro

2017年9月12日~10月12日の1ヶ月間!
観光会社「別視点」は福島県猪苗代町に移住してるよ!!
猪苗代を起点にして、福島県を掘って掘って掘りまくり、記事を更新しまくる。

◎「なんでそんなことするの?」「なにするの?」てな企画概要はこちら
◎1ヶ月住みます会社にまつわる記事一覧はこちら
◎誰でも参加できるイベントが4つあるよ!イベントリスト




Deapsにも「下里工芸」を登録したよ

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