分類図

 路上の植木鉢を10年観察しつづけ、分類図まで作りあげてしまった木村りべかさん。
植木鉢観察に欠かせない要素「鉢」についての分析を展開しています。
ホームセンターや園芸店で売っている「製品鉢」と、お鍋や漬物樽・お風呂の浴槽など本来植木鉢でなかった物を植木鉢とみなして使っている「みなし鉢」に分けられます。


(著者:木村りべか





【著者】

木村りべか
 (記事一覧/ twitter / 公式サイト

 kimura

図画工作作家。植木鉢と動物とかわいいものに興味があります。



みなさんこんにちは。
木村りべかです。

連載第2回目の今回は、植木鉢を鑑賞する上で欠かせない「鉢」についてご紹介します。


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前回ご紹介した分類図でいうと、「装備」の中の「鉢」の項目にあります。
鉢は色々な種類があり、見た目の違いが楽しいです。

分類図では、「製品鉢」と「みなし鉢」に大きく分かれています。
製品鉢は「ホームセンターや園芸店で売っている鉢」ですが、みなし鉢は「お鍋や漬物樽、お風呂の浴槽など本来植木鉢でなかった物を植木鉢とみなして使っているもの」です。

育て主の鉢選びから、庭先の景色がガラリと変わっていきます。





【製品鉢】

まずは植木鉢として製造され、植木鉢として存在しているオーソドックスな製品鉢を見ていきます。

分類図
▲この図の左側ですね

モチーフ鉢以外は、丸とか四角とか、大量生産しやすい図形的な形です。
置いたり掛けたり吊るす鉢、大きかったり小さかったり色々な植木鉢製品があります。
全部だと長くなりそうなので、サクッと触れていきます。




★素材選びで庭先の様子が違ってくる


・陶

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ザ・植木鉢という王者の風格を漂わせています。
重厚で高級感があり、絵付けやレリーフなど意匠が凝っている鉢も多いです。
育て主のお庭を美しく彩りたい気持ちが表れています。




・プラスチック

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軽くて安くて割れにくいプラスチック製の鉢は、かなり多く見られます。
現代のオーソドックス植木鉢。



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手に入れやすいせいか、植木鉢をたくさん所有しているお宅はプラスチック鉢を使っていることがほとんど。私にも収集癖があるので、植木鉢を増やしたい気持ちがわかる気がします。




・セメント

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どーんと大きな鉢で、樹木を育てていることが多いです。
捨てるに捨てられないでしょうから、この素材を選ぶ育て主には「途中でやめない」という強い覚悟が必要そうです。





★大きければ大きいほどなんか良い

手のひらに余裕で収まる小さな鉢から、人が入れるくらい大きな鉢まで、植物に合わせて鉢のサイズは様々。


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鉢が大きいほど感動的で、なぜか笑ってしまいます。





★モチーフ鉢

モチーフ鉢の最大の特徴は形にあります。
動物の形をしている鉢が多く、他は日用品や衣類などの形を真似て作られています。
ユニークな見た目が楽しく、鉢に関わる人(作った人・買った人)のクセが出てくるので、モチーフ鉢は好きな鉢ジャンルです。



生き物

・犬

人類の友人・ワンちゃんはよく見かけますね〜
室内犬率が高いです。

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・猫

犬に比べるとググッと少ない印象です。
植物を踏み荒らしたりトイレにしてしまう猫と植木鉢は相容れない関係なのでしょうか。

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猫好きな育て主なのかな~。絶対良い人だろうなあ。




他にもウサギ、鳥、ヤギ、馬といった、ペットや家畜動物が登場しがちです。

・ウサギ

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・白鳥

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空の鉢を持って佇んでるウサギも鉢です。




・ヤギ

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・馬

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お腹に植物を入れて運んでいます。
植物入ってないけど中央には靴型の鉢が。




・天使と悪魔

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悪魔は広尾で見つけました。
お金持ちは鉢のセンスが違うなあ…




・ピエロ

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綺麗なお花がピエロのイメージとよく合っていて、育て主のひそかな「魅せる」意識を感じます。




・サボテン


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サボテンがサボテンを育てています。





日用品

どうしてこの形の鉢を選んだのでしょう。
敢えて庭先に置いている経緯はわかりませんが、育て主のこだわりを感じます。


・かご

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・ティーカップ

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アフタヌーンティーとか好きなんでしょうか。豊かな生活を連想します。




・靴(犬付き)

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靴の先端にテプラで「鼻をさわって幸せ!」と書いてあります。
幸せを与えてくれるなんて、育て主の善良さが伝わってきます。




・ズボン


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なぜズボンを植木鉢にしたのか、なぜズボンを自宅の庭先に置いたのか。
製造者と育て主の意図を知りたくなります。





【みなし鉢】

これまで製品鉢を見てきましたが、私は何らかの容器に植物が植えられていればそれは植木鉢であると認識していて、「みなし鉢」と呼んでいます。

分類図
▲この図の右側ですね

みなし鉢は、家庭や職場から出る不用品を植木鉢として再利用しています。
育て主の生活の断片を見ているようで、鉢ジャンルの中で見応えがあります。
容器の数だけ植木鉢になり得るので、観る側は新しい鉢に遭遇する膨大な可能性に備えていなければなりません。




家から出てくるみなし鉢



★台所・空き容器編

水に強いからか、台所やお風呂・洗面所などの水回り用品は鉢にみなされることが多いです。



・漬物樽

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プラスチックの漬物樽の植木鉢は、かなりよく目にします。
写真では水抜く用の穴を空けてあげてて植物への気遣いが伝わります。
陶器の漬物壺も雰囲気があります。
梅干し好きなのかなー、自家製のぬか床作ってたのかな、などと頭をよぎります。




・釜飯

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釜飯もあるあるですね~~。
しっかりした素材なので、捨てづらいですよね。




・プラカップ

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食べ終わった食品のプラカップを植木鉢にしています。カラフルでかわいい。
食べ物の好みをチラ見してる感じ。




・空き缶

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ポップな色使いが庭先を楽しく彩っています。
手の込んだ演出に、育て主の愛情を感じます。




・ペットボトル

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加工のしやすさも手伝い、どちらも斬新な形に仕上がっています。
ペットボトルを逆さにする発想すごいなあ。





★台所・調理器具編


・ザル

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水はけ良さそうです。




・鍋

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お鍋はたま〜〜に遭遇します。
取っ手付きなので持ち運びしやすそう。




・炊飯器、お釜

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炊飯器・お釜はレアです!
ユーモラスで親しみのある姿が気に入っています。




・急須

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地面に置いてあるとすごい違和感を感じます。





★お風呂、洗面所

・洗面器

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浅めの容器使いが、盆栽の器みたいに見えてくるような、こないような。




・浴槽

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浴槽は木を入れるのに良い大きさです。
置いてあるかわいい小物使いから、育て主の遊び心が伝わります。




・お風呂用ブーツ

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植木鉢として見ると、サイズ感ぴったりなことに気づきます。





★その他、色んな部屋から出てきた物が植木鉢になる

・ゴミ箱


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大容量のゴミ箱は大きめの植物を育てるのにちょうど良さそうです。
ゴミ箱って気づいたら増えてることがあるので、植木鉢に成り替わりやすいのでしょうか。




・バスケット

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本来は鉢カバーだったバスケットが、そのまま鉢として使われています。
シースルーになった鉢から根っこがはみ出していて、セクシーな感じ。




・バケツ

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イチョウをバケツで育てちゃう。植え替えするんでしょうか。




・水槽

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水生のペットがいなくなった後に植物を育てることにしたのでしょうか。
水槽は鉢だけでなく、台や温室代わり(?)にも意外とよく活躍しているアイテムです。





★庭先


・土のパッケージ袋

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買ってきた土の袋を開けてそのまま鉢にしちゃう、一瞬ものぐさに見えるけど効率の良い鉢。




・コンクリートブロック

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ブロックの空洞を土で埋めて使うなんて…




・DIY


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既製鉢の上にセメントで貝殻を一体化させる力技。
鉢と植物のボリュームが合わさって、迫力ある!




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なんのために作られた物なのでしょうか。
周りにペンキが飛び散っているので、塗装をこの場でしたことくらいしかわかりません。
謎がたまらない鉢です。




・車止め

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おわかりいただけるだろうか




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頭の穴の中で植物が育ってました。
これはっ!植木鉢っっ!です!!!





職場から出てくるみなし鉢

・発泡スチロール

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発泡スチロールはよく鉢にされてます。
築地や月島など、鮮魚店や飲食店が多くある土地でよく見かけます。
植物を育てるのに良い素材らしく、「トロ箱栽培」というちゃんとした園芸技法があるそうです。
素材は強くないので、壊れて放置されているのをよく見かけます。




・一斗缶

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お蕎麦屋さんなら絶対ありそうな、醤油の一斗缶。
「いつも缶捨ててるけど、たまには植木でも育てるか〜」みたいなテンションで始めたのでしょうか。結構年季が入ってます。




・エンジンオイルの容器

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車の整備など機械系の職場から出たであろう、エンジンオイルの容器を植木鉢として蘇らせています。植木鉢にするお宅はたくさん並べがち。





終わりに

植木鉢を気にし始めた頃は、陶器の植木鉢のある、ノスタルジックでキレイめな風景を選んで撮っていました。(谷根千とかよく行ってた)
が、いつの間にか「人のクセ」を気にするようになり、みなし鉢の面白さにハマっていきました。

まさか植木鉢にならないと思っていた物が、育て主のみなしセンスであっさりと植木鉢に仕立てられてるのを見付けた時、静かに度肝を抜かれ、喜びを噛みしめます。

鉢はとにかく種類があるので、この世界には未確認の鉢が星の数ほどある…と考えたら気が遠くなってしまいますが、見つける楽しみも相当あるな~、と思うようにしています。
素敵な鉢にぼちぼちと出遭えていけたら幸せだなあ。




【著者】

木村りべか
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図画工作作家。植木鉢と動物とかわいいものに興味があります。