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東京の離島・神津島。
縄文人たちが矢じりとして利用した黒曜石の産地だ。
黒曜石研究家と別視点一行が採石に出かけたお話し。

(著者:かとみ




【著者】

かとみ
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平日は秘書をしながらマジメな雰囲気を出しています。だいたい甘いもののことを考えています。



神津島という離島にやってきた。

神津島は東京から南へ178kmの位置にある伊豆諸島のひとつだ。
火山島らしく断崖があちこちにある。かと思えばなだらかな砂浜もある。地形の起伏が面白く、自然に囲まれた美しい島だ。

 


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展望台からの景色。海が青くてとてもきれい。
 

 

神津島といえば黒曜石。黒曜石ってどんな石?


神津島といえば黒曜石で有名らしい。
いうことで今回は黒曜石を採石しに行ってきた。

…が、レポートを始める前に、まずは黒曜石がどういう石なのか説明しておきたい。



  
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黒曜石はマグマが急速に冷えて出来る天然のガラスで、割ると鋭い破断面が現われるのが特徴だ。
特殊な環境条件で生じ、特定の場所でしか採石できない貴重な石といえる。

そんな貴重な黒曜石を、その昔、めちゃくちゃ欲した人がいたらしい。
人というと語弊があるので、言い直そう。

縄文時代の人類である。

ガラス質で鋭利な黒曜石は、槍や矢じりに使用するのにうってつけだったのだ。 



  
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「めちゃくちゃ刺さる石があるんだけどさ、知ってる?」

「うわ、どうしたの! その鋭い石!」

「海の向こう、遠ーーーくに見える島。見える? あそこの島で採れるらしいよ。」

みたいな感じで、縄文人の間でホットな口コミが広がったのだろうか。(当時、まだ文字はなかったといわれている)

 


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縄文人たちは黒曜石を求め、海へ出たという。
現代でさえ東京から神津島まで大型客船で7時間もかかるというのに、すごいバイタリティだ。私なら行かないだろう。


    

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丸太のカヌーで行ける距離なのだろうか。
もう一度言う、私なら絶対に行かない。一度の航海で1万回は舟がひっくり返りそうだ。

しかし縄文人は荒波を超え、神津島へ向かったという。
その証拠に、縄文時代の神津島産の黒曜石が日本各地から大量に出てきている。また、さらに昔の後期旧石器時代の遺跡からも出てきており、その形跡から世界最古の往復航海だったのではないかと言われている。



縄文人のガッツは計り知れない。


縄文人にそこまでさせる黒曜石って一体なんなんだ。
 
…黒曜石について説明したいと始めておいて、「黒曜石って一体なんなんだ」に着地してしまった。
要するに縄文人を夢中にさせた黒曜石という石があって、それが神津島で採れる、ということだ。

 

 

黒曜石を求めて山の中へ


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今回ガイドをしてくださるのは、神津島で地域おこし協力隊として活動する林さん。

何を隠そう林さんも黒曜石の魅力に憑りつかれた1人である。日々、黒曜石を分析し、歴史を紐解く研究をしているそうだ。
林さんの案内で、東京別視点ガイド編集長の松澤さん、カメラマンの斎藤さんと4人で黒曜石の採石へ向かうことになった。 

 
村落から山をひとつ越え、ぐねぐねとした道を車で走る。
進入禁止の行き止まりになったところで車を停めた。



 
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これから向かうのは観音浦と呼ばれる海岸沿いの場所らしい。
看板をよく見ると「往復3時間30分、上級者コース」と書いてある。初見の情報だった。



 
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パンフレットにも「~崖下り気分のトレッキング~」とサブタイトルがあった。

崖下り…? サブタイトルにしては力強い。

 
リュックに食料と水を詰め、軍手をはめ、林さんに続いて山道を進む。
山道といっても、海岸に向かって山を下っていくイメージ。


 

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久しぶりに豊かな自然の中を歩くのは楽しかった。みなさんとの会話も弾み、和やかなムード。
これで黒曜石も見られるのだから、良い一日になりそう。

 


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と思っていたのも束の間、すぐに道らしき道は消えた。湿った落ち葉に足を取られる。周りの木の枝や根っこに掴まりながら慎重に足を前へ出す。

普通に断崖も現われた。断崖ってそんな日常みたいな感じで現れるんだ。

 


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 「~崖下り気分のトレッキング~」というよりも、「~トレッキング気分の崖下り~」だと思う。リポビタンDのCMでこういう光景を見た気がする。

そんなことを思っていたら、バランスを崩して岩場から落下してしまった。

死んだかと思った。幸いケガはなかった。

右半身ズル剥けになったけど、それより、起き上がった時に見たみなさんの顔が忘れられない。それはもうドン引きしていた。

 


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和やかなムードが嘘だったかのように、一気にシリアスになった。すみません。

私たちの苦労なんて、当時の縄文人たちに比べたら足元にも及ばないはず。
でも私たちは自然の厳しさに引いていた。まだ山を下り始めてそう経っていないのに、すでに泥人形のような姿になっている(私だけ)。

縄文人はすごい。こうやって命がけで黒曜石を採りに行ったのだろうか。

 

  
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木々をかき分け、ようやく海が見えた瞬間、思わず「海だ!」と叫んだ。
体力が底をついている人間は、目の前の現象をありのまま叫ぶ。


 
 

岩を飛び谷を越え、黒曜石まであと少し


 何とか山のステージをクリアし、お次は海岸のステージ。
 

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海岸は岩だらけだった。

青い海と、荒々しい岩の絨毯。自然の織り成すダイナミックなアートを前にして、カメラマンの斎藤さんはシャッターを切る手が止まらないようだった。

 


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自然と一体化して写真を撮る斎藤さん。一体化しすぎて岩がもう自宅のベッドみたいになってる。

 

 
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先を急ぎたいが、自分の体よりも何倍も大きな岩に苦戦を強いられる。足場を確認しつつ、慎重に岩と岩を飛び移る。

 
 

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どう見積もっても足の長さが足りない時はどうしようかと思った。登れない。気まずい。なにせ後ろからのプレッシャーがすごい。

 
 

 

いよいよ黒曜石とご対面


そんな苦労に苦労を重ね、ようやく黒曜石とご対面タイムがやって来た。
 

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ご対面というか実はもう目にしていた。この足元の砂に混じった黒い粒が黒曜石!

今までの疲れが嘘のように吹き飛び、私たちのテンションは最高潮に達した。
辺りを見回せば黒曜石だらけ。険しい道を辿ってきた分、感動が止まらない。

今、私たちは縄文人たちと同じ感動をなぞっているに違いない。 

 
 

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背後の山をよく観察すると、黒曜石の地層が確認できた。十万年以上前の噴火で出来たものらしい。
この地層が崖崩れで少しずつ削れ、雨が降って出来た小さな川に運ばれて、地上まで落ちてくるそう。

たった1つの小さな石にも、そこにある理由がある。そう思うと、とてつもない歴史にロマンを感じる。
松澤さんはその感情が溢れすぎたのか、終始「地球~~~!」と言っていた。

 
 

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「地学~~~!」とも言っていた。

 
 

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林さんが拾ったひと際大きな黒曜石の塊を見せてもらった。黒々と光り輝いている。

立派な黒曜石を前にして、縄文人のDNAが呼び覚まされたのかもしれない。
松澤さんと斎藤さんも負けじと大物の黒曜石を探し始める。

「林さん、見てください! これは結構良い石なんじゃないですか!」

林さんによる黒曜石オーディションが始まった。

 

 

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 「これはそんなに質が良くないですね」


と穏やかな口調で容赦なくポイッとされていた。

林さんは黒曜石のことになるとシビアな一面を見せる。なかなかオーディションの合格者は出なかった。
でも不思議なもので、ポイッとされてもめげることはない。彼らはキラキラした目でいつまでも黒曜石を探し続けた。

 
 

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 「ここからもっと先へ行くと、良質な黒曜石が転がってるんですよ。ちょっと採りに行ってきていいですか?」
とそわそわした様子の林さん。

間髪入れず、松澤さんと斎藤さんも
「僕らも行きたいです!」
と声を上げた。 

 

 
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カメラのズームがザラつくほどに彼らは先へ進んだ。

彼らを止めることなんて出来ないのだ。そこに良質な黒曜石が待っているのだから。
 

私からは見えなかったのだけど、現場では色々とあったそうだ。
林さんの集めた黒曜石がリュックに入りきらなくなったのだ。林さんは採石に来るとしょっちゅうこの事態に陥るらしい。

良い黒曜石はどうしても持ち帰りたい、だけどリュックに石を詰め過ぎると重くて帰りの崖登りが出来なくなる。
毎回、感情と理性のせめぎ合いだという。

 

 

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聞いた時は「日本昔ばなしかよ」とつい思ってしまった。
 
たぶん縄文人も舟で黒曜石を持ち帰る時も、こんな風に苦労したのではないかと思う。
今も昔も石に魅せられた人々は、同じ行動をしているのかもしれない。

 
今回、黒曜石を通して色々なものに触れることが出来て、とても面白かった。
たったひとつの石から、自然と人の関係、それらの歴史を見ることが出来るなんて。

神津島に来て良かったとつくづく感じた1日だった。

 

 ※今回の採石は研究目的としています。黒曜石は持ち帰らないようにしましょう。

 

 

おまけの後日談:なぜか離島でVRをプレイする人たちをじっくり見ることになった


採石から帰る途中、雑談をしていた時のこと。 

  
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ということで、急きょ林さんのお宅へお邪魔することに。 

 

 
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「一か月離島を渡り歩く企画の途中で、VRが出来るとは思わなかった。」とのこと。

確かに。でも気になったものは、離島を渡り歩いている途中だろうが何だろうが、チャレンジするのが別視点ガイドのやり方なのだろう。

 

 
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「サマーレッスン」というゲームが始まった。

プレイヤーが家庭教師になって、かわい子ちゃんに勉強を教えるという内容。家庭教師の立場を利用して女の子をいろんな角度から眺められる。
これがまたプレイヤーの性格が浮き彫りになる良いゲームだった。

 

 
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松澤さんは女の子に接近しようとするあまり、雌豹のポーズになったりしていた。
なんだか事故現場に遭遇したようなやりきれない気持ちになった。


 

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海辺で体力作りを手伝うシーンでは、女の子をうちわで扇いであげるイベントが発生。家庭教師なのになんでそんな展開に…?




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その光景に驚きおののく、さっきまで雌豹のポーズだった人。

外野からプレイ画面を見てると恐ろしく冷静になる、というのはVRあるあるなのかもしれない。

  

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別視点ガイドの副代表、橘内さんも参戦。とにかくデカさを言っていた。なんかデカいらしい。

 

  
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デカさに関しては、なぜか全員だんまりを決め込んでいたので、とても不思議な光景だった。答えてあげなよ。

もしかしたら橘内さんだけ巨女の部屋に迷いこんでたのかもしれない。
 


 
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カメラマンの斎藤さんもチャレンジ。

VRに興じようとすると、人は自然と正座をしてしまうようだ。背筋がシャンとしてる。
斎藤さんは他のお2人に比べて、紳士的な振る舞いだった。動作も落ち着いている。

 

 
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結果的には紳士的な動作のせいで、危うく林さんをお触りするところだったので、一番ヒヤヒヤする展開になった。

 
そして私はというと、プレイせずに終わった。

3人のプレイを見ていたら鼻水が無限に止まらなくなったからだ。
離島でハードな登山をしたかと思えば、ハードなVRプレイを見せつけられて、鼻の内部が崩壊したのだと思う。
 

ありがとうございました。





「東京の離島1ヶ月渡り歩きます会社」とは


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この離島記事は「東京の離島1ヶ月渡り歩きます会社」の企画で取材したものだよ!
ボノ株式会社が運営するサイト「まち応援」のスポンサードのもと、2017年12月16日~翌1月16日の1ヶ月間、東京の離島を渡り歩いた。

◎企画概要:「東京の離島1ヶ月渡り歩きます会社」やるぜ!会社ごと移動しまくる!



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