街角の園芸や植物に魅了され、「路上園芸学会」として活動する村田あやこさん。
植物の根っこがいかに良いかをフェチズムたっぷりに語ってくれます。
(著者:路上園芸学会・村田あやこ)
プロローグ
おっぱいから足からうなじまで。世の中にあまたあるフェティシズムの世界。
いままでどちらかといえば遠巻きに見ていたが、実は最近、この世界に自分も足を踏み入れているのではないか、とうっすら感じている。
いままでどちらかといえば遠巻きに見ていたが、実は最近、この世界に自分も足を踏み入れているのではないか、とうっすら感じている。
昨今私の心をとらわれてやまないのもの。それはずばり「根っこ」だ。
え?ハ??根っこ?と戸惑われた方もいるかもしれない。
そう。樹の根っこである。幹の下でウネウネしている、あれだ。
見れば見るほど身体の奥の何かがうずいて、いてもたってもいられなくなる存在、根っこ。
この記事では僭越ながら、私の根っこに対する思いのたけをぶつけてみたい。
それによって、根っこの楽しさに開眼しちゃう仲間が一人でも増えたものなら、これ幸いだ。
それによって、根っこの楽しさに開眼しちゃう仲間が一人でも増えたものなら、これ幸いだ。
ようこそ、根っこワンダーランドへ!
私と根っこ
そもそもなぜ根っこに惹かれるようになったのか。
私はかねてより、街かどの園芸や植物を「路上園芸」と呼んで、ひっそり愛で勝手に魅力を発信する活動を行ってきた。
「路上園芸」の中でも特に惹かれるのが、植木鉢をこれでもかとはみ出し、大きく成長してしまった植物だ。
街中で、人の手を半分離れて生命力が爆発してしまった植物がもたらす奇景には、たくましさとともに、妙なおかしみと愛らしさを感じてしまうのだ。
そんな「奇景植物」でも、特にどこに惹かれるのかと考えてみると、根っこだった。
ぱっつんぱっつんになった植木鉢から根っこがはみ出すさまは、生命力の爆発を体現しているようで、あれこれ考える前に無意識に目を奪われてしまう。
大きく成長した植物を見ると、脊椎反射のように這いつくばって根っこを確認してしまうため、これまで撮影した路上園芸の写真を見ると、妙に根っこの写真が多い。
あれこれと根っこを見ていくにつれ、根っこのさまざまな活動=根活(こんかつ)は、見ごたえある奇景植物を生み出す立役者……ってことは、根っここそ影の主役ではないか!とふと思った。
そんな根っこのすごさに気づいてしまって以来、街を歩いても、公園に行っても、ことさら樹の根っこにばかり目がいってしまうようになった。
ついには壁を這う配線や管まで根っこに見えてしまうありさまだ。
思いのたけを語らせて!私の思う根っこの魅力
今までは漠然と「ぃ…イイ!根っこ、ぃイイ!」と悶えるだけだった。
しかし漠然と「根っこっていい!」と言われても、ピンとこない方が多いかもしれない。
しかし漠然と「根っこっていい!」と言われても、ピンとこない方が多いかもしれない。
そこでこれを機に、私なりにその魅力を整理してみたい。
根っこの魅力。まずなんと言っても造形の妙である。
土の中から力強く盛り上がり、地を這うようにうねり、おもちみたいにくっついたり、複雑怪奇に絡み合う変幻自在な姿かたち。
縄文時代のアバンギャルドな土器のようでもあり、超前衛的な現代アートのようでもある。
縄文時代のアバンギャルドな土器のようでもあり、超前衛的な現代アートのようでもある。
宇宙人のような気持ちで、いったん心を無にして見てみてほしい。
こんな珍奇な姿かたちのものは身の回りにそうそうない。
こんな珍奇な姿かたちのものは身の回りにそうそうない。
「エ?何この生き物?」っていう気にならないだろうか。
なりますよね?
根っこのもう一つの魅力。それは力強さだ。
そもそも樹はでかい。
樹は地球上で一番大きな生き物と言われる。
世界一大きいジャイアントセコイアという樹の高さは115メートルもあるらしい。でかい。たしかにこんな生き物いない。
…と、ここまで大きくはなくても、成長した樹のずでんとした根っこは、まさに巨大生物が大地をつかんでいるようなスケール感だ。
根っこの大きな役目は、樹を地面にしっかり支えること。
樹は自ら動いて生える場所を選ぶことはできないので、急な斜面とか、めっちゃ狭い鉢とか、風がびゅんびゅん吹く場所とか、時に大変そうな場所に生えることがある。そんな場所で樹を支えるのは一苦労だろう。
樹は自ら動いて生える場所を選ぶことはできないので、急な斜面とか、めっちゃ狭い鉢とか、風がびゅんびゅん吹く場所とか、時に大変そうな場所に生えることがある。そんな場所で樹を支えるのは一苦労だろう。
しかし過酷そうな状況でも「オゥ、こっちは俺らに任せときなって!」とばかりに、樹が倒れないようにぶっとい根っこをあたりに張り巡らし、周りの環境にしなやかに対峙する頼りがいのある姿、そして堂々たる風格。
思わず「ヒィッ!素敵ぃぃぃ!」と惚れてしまう。
思わず「ヒィッ!素敵ぃぃぃ!」と惚れてしまう。
ananで「抱かれたい根っこ特集」とかやってほしい。たぶんやらないので、自分で勝手にやりたい。
そして根っこの最大の魅力。それはパンチラ感だ。
どういうことか。
多くの根っこは、平常時は土の中に隠れている。樹木を支えたり、土から水分や栄養素を吸い上げたりと、縁の下の力持ち的に、土の中でいろいろと活動しているらしい。
が、その様子は普段なかなかうかがい知ることができない謎めいた存在である。
それが何らかの事情でひょいと地表に現れてきたとき、私たちははじめてその姿を知ることができる。
そのため根っこを見ると、普段は隠された秘密の花園を垣間見てしまったかのように、妙にドキドキしてしまうのだ。
この胸のざわめきは、まさにパンチラと同じではないか。
東京別視点ガイド代表の松澤さんが、これを「根ッチラ」と命名された。
言いえて妙な、あまりに素晴らしいネーミングに、根っこ業界に激震が走った。
言いえて妙な、あまりに素晴らしいネーミングに、根っこ業界に激震が走った。
路上園芸学会さん(@botaworks )が街歩きしてるときに「ひょんなことで見えちゃってる植物の根っこがたまんない。普段隠れてる大切な部分だから」って趣旨のこと言って、パンチラならぬ根っチラだ~っておもった pic.twitter.com/p5xdwW1lPg
— 松澤茂信 (@matsuzawa_s) 2018年2月18日
独断と偏見!根っこの楽しみ方
さて、根っこの魅力をかいつまんでお伝えしたところで、独断と偏見で根っこの楽しみ方をいくつかご紹介したい。
1.フリーダムなこんがらがり具合に悶える
根っこは地面の下で複雑に絡み合って樹を支えている。
見ていると全身がつりそうになるくらいに壮絶にもつれちゃっているものや、漁網のようにあたり一面をからみつくしているものまで、そのこんがらがりかたは多種多様だ。
見ていると全身がつりそうになるくらいに壮絶にもつれちゃっているものや、漁網のようにあたり一面をからみつくしているものまで、そのこんがらがりかたは多種多様だ。
普段生活していて、こんなこんがらがり具合に遭遇することはそうそうない。
かばんの中でぐちゃぐちゃになったイヤホンのコードだって、泥沼な昼ドラの人物相関図だって、ここまでこんがらがってはいない。
かばんの中でぐちゃぐちゃになったイヤホンのコードだって、泥沼な昼ドラの人物相関図だって、ここまでこんがらがってはいない。
「ちょ!落ち着いて!」と無粋なツッコミを入れてしまいそうにすらなるほどのフリーダムさがたまらない。
根っこ業界では、これを「根(こん)がらがり」という(いま勝手に命名)。
こんがらがってる根っこを見つけたら、「あ、根(こん)がらがってやんのー!」と言って近づき、ぜひその壮絶さを間近で味わってみよう。
わけもなく「アア~~~!!」と叫びたくなるはずだ。
2.アクロバティックなしがみつきっぷりを応援する
根っこのもう一つの見どころ。それはアクロバティックさだ。
樹が生えるのは平らな土の上だけではない。
岩、山の斜面、川の護岸など、平地でない場所に樹が生えているのを見かけたら、ぜひ根っこを見てみてほしい。シルクドソレイユばりの、手に汗握るしがみつき具合を堪能できる。
岩、山の斜面、川の護岸など、平地でない場所に樹が生えているのを見かけたら、ぜひ根っこを見てみてほしい。シルクドソレイユばりの、手に汗握るしがみつき具合を堪能できる。
重力に果敢に挑戦したるぜというたくましさと、微動だにしないゆるぎなさに、思わず胸が熱くなる。
3.「根ッチラ」に萌える
そして個人的に推したいのは、先ほどもお伝えした「根ッチラ」っぷりだ(素晴らしいネーミングなので積極的に使っていきます)。
地表にチラリ。土手からポロリ。植木鉢からにょろり。少し気にしてみると、根っこはいろんなところから不意に顔を出している。
「…ハ!すいません、自分、根ッチラしちゃってましたか!」とばかりに、ほんの少し奥ゆかしげに顔を覗かせているのを見ると、思わずキュンとしてしまう。
そして地表に現れた根ッチラ部分の独特の造形美も、ぜひ丹念に味わいたい。
そして地表に現れた根ッチラ部分の独特の造形美も、ぜひ丹念に味わいたい。
身近な街かどで「根ッチラ」に出会いたいという方にオススメの植物は「シェフレラ」。
つやつやした常緑の葉っぱが特徴的で、カポックの名前でも知られる、路上でおなじみの植物だ。
寒さにも強くとにかく丈夫なので、路上の至る所で遭遇できる。大きく成長したシェフレラの植木鉢を見ると、たいがい根ッチラしている。
寒さにも強くとにかく丈夫なので、路上の至る所で遭遇できる。大きく成長したシェフレラの植木鉢を見ると、たいがい根ッチラしている。
おばけのようなシェフレラを見つけたら、ぜひ植木鉢を確認してみてほしい。
そこには魅惑の根ッチラワンダーランド、略して根ッチランドが広がっている。
ただし街中でしゃがみこんでじぃっと根ッチランドに没入していると、不審がられるので要注意!
「コンタクトレンズを探していて…」とか、「財布を落としちゃって…」とか、いくつかそれっぽい言い訳を用意しておくことをお勧めする。
「コンタクトレンズを探していて…」とか、「財布を落としちゃって…」とか、いくつかそれっぽい言い訳を用意しておくことをお勧めする。
やがて「根ッチラ」も度が過ぎると、開けっぴろげな根っこ…もとい「根っぴろげ」状態となる。
根ッチラが徐々に進行し根っぴろげとなるケースもあれば、植木鉢が割れて急に根っぴろがってしまうこともある。
根ッチラが徐々に進行し根っぴろげとなるケースもあれば、植木鉢が割れて急に根っぴろがってしまうこともある。
「根ッチラ」がふいに見えちゃったパンチラなら、「根っぴろげ」は秘宝館並みのあけすけさ。
根っこの形状をあますことなく堪能でき、その神秘的かつ不思議な趣に思う存分浸ることができるのだ。
根っこの形状をあますことなく堪能でき、その神秘的かつ不思議な趣に思う存分浸ることができるのだ。
根ッチラでは刺激が足りなくなってしまったという方は、ぜひ時折根っぴろげに冒険してみるのもおすすめだ。
根っこ道は続く
以上、やや前のめりで根っこの良さや見どころについて語ってきた。
ほら、もう、根っこ、見たくてたまらなくなったでしょ?
ネ?
根?
そこに樹が生えていれば、その足元には、魅惑的な根っこの世界が広がっている。
身近な街かどや公園でも、結構見ごたえのある根っこに出会うことができる。
身近な街かどや公園でも、結構見ごたえのある根っこに出会うことができる。
噂によると、南国の森に生えている樹の根っこはとんでもないらしい。
身近な路上や公園の根っこだけでこんなに興奮してしまうのだから、そんな場所に足を踏み入れてしまったらどうなるんだろう…間違いなく失禁してしまいそうだ。
身近な路上や公園の根っこだけでこんなに興奮してしまうのだから、そんな場所に足を踏み入れてしまったらどうなるんだろう…間違いなく失禁してしまいそうだ。
でもいつか挑んでみたい。
おむつをつけて。