路上の植木鉢を10年観察しつづけ、分類図まで作りあげてしまった木村りべかさん。
悪天候や外敵から「鉢」を守る装備品についての分析を展開します。
(著者:木村りべか)
みなさんこんにちは。木村りべかです。
植木鉢百景第3回目は「植木鉢を守る装備品」についてご紹介します。
私が自作した分類図で言うと、「装備」の中の「守る」項目。
▲植木鉢分類図
世の中にはいろんな災難が存在していて、いつ直面するかわかりません。
植木鉢も同じこと。
風、寒さ、猫…など、様々な災難が待ち受けています。
「植木鉢を守りたい!」
育て主の想いは1つですが、そのやり方(技)は人それぞれ。
そこに育て主の優しさや性格がにじみ出ます。
災難ごとの対策に分けてご紹介します。
vs 天候
●強風
台風後の街では強風で倒れた植木鉢がよく見られます。
「転ばぬ先の杖」と言いますが、
「植木鉢も倒れる前に固定しておこう」と災難に備えている技です。
ひもで固定したり、重りを乗せたりと育て主によって色々な技が繰り広げられます。
・ひも
柱や柵などに縛り付けて固定しています。
▲植物に対して小さく転びやすそうな鉢を、細いひも1本で支えています。
幹にメッシュを巻いてから縛っているところに優しさを感じます。
▲ひも付けてるなら立たせてあげれば…と思ってしまいますが、育て主が大らかな方なんでしょう。
▲同じ種類の植物が並んでいます。
いつの間にか増えちゃったけど手放せないのか、たくさんありますね〜。
上段はひもで落ちないようにしています。
▲なぜか「そこに置かなければ良いのに…」という植木鉢が多い気がします。
それでも置かずにはいられない、育て主のこだわりが庭先に鎮座しています。
・重り
鉢に石やレンガ、コンクリートブロックをダイレクトに乗せる技です。
強風だけでなく、盗難防止にも一役買っています。
▲細い幹に対して、大きな石がアンバランスです。
▲こちらも大きくてずっしりしてますね〜。
扉の前に植木鉢を置く「開けずの植木鉢」という技も披露してます。
▲なんだかお仕置きっぽい。
▲こちらは「ひも」と「重り」の合わせ技。
鉢自体をまとめて重りにし、飛ばないようにしています。
ガムテープはビニールひもよりガッチリ感があります。
●寒さ
公の施設や寒さの厳しい地域では、「雪囲い」などちゃんとした園芸技法が使われることが多いですが、個人宅ではオリジナルの技がキラリと光ります。
・園芸用ネット
寒さと強風から植物を守ります。
▲中に何が入ってるんだろう…と想像が膨らみます。
・ビニール袋
ビニールハウスの小さいバージョンのように見えます。
▲ビニール袋をかぶせている目的を教えてくれてます。
▲ひと鉢ずつ丁寧に袋をかぶせてあげてます。
画像左上では傘まで付けてあげていて、植物への愛を感じます。
▲春に見に行ったら、こんなにキレイにお花が咲いてましたよ!
・水槽
▲「温室」ってことかなと認識しています。
(水槽を再利用しているお宅って結構多いので、いつか取り上げたいです)
●雨
・傘
植木鉢に傘を備え付けてあげてるお宅があります。
もともと外に出してるんだし濡れてもいいじゃん!と思ってしまいますが、
びしょ濡れにさせるのが忍びないのでしょうか。
▲植物に対して傘の面積が足りてないことが多いです。
矛盾と優しさに満ちた傘使い。
・プラスチックカップ
▲ドーム型の屋根がSF感を演出しています。
根元は重ねられた鉢、メッシュの柵で守られています。
vs 外敵
●猫
猫は土を掘り返したりトイレにしたりと、植木鉢に甚大な被害を与えます。
生き物なのでやって来るタイミングがわかりませんが、
大切に育てた植木鉢をしれっと攻撃してきます。
育て主と猫との数だけ、様々な攻防が繰り広げられます。
・ペットボトル
猫対策で代表的なのは、お馴染みペットボトル。
効果があるのかわからない、というか「ない」説をよく聞きますが、
庭先では根強い人気のある装備です。
▲「アリの子一匹通しませんよ!」という気合い。
▲植木鉢の動きを封じ込めるように整然と並ぶペットボトル。
▲パイロンとコンクリートブロックもセット置きで厳重に警戒しています。
植木鉢を守るために、かえって強いストレスが生まれてしまっている気が…
・猫チク
筆者が勝手に「猫チク」と呼んでいるのですが、
猫の足裏をチクチクさせて植木鉢に近寄らせないアレです。
ホームセンターや100円ショップでよく売っています。
▲ただならぬ雰囲気。猫に何されたんですか…
▲猫チクは地面に置かれるだけではありません。
▲ハンガーやお箸を土に挿して自作しているお宅も。
▲割り箸がめちゃくちゃ鋭くなってます。
猫への強い憎悪を感じさせ、闇の深さが感じられます。
●人間
人間は意思を持って行動するので、ある意味天候や猫よりも恐ろしい存在です。
文字を使った人間用の対策は、少し切なくもあります。
・メッセージ
育て主に話を聞くと、外置きが多い植木鉢の盗難被害は意外と多いです。
高価そうな植物や物から盗んでいくらしいので悪質です。
育て主の、内なる怒りが見え隠れしています。
▲大事に育ててたトマト、盗られちゃったんですね…。
ガッカリ感と恨めしさが伝わってきます。
・鎖
高価で手間のかかりそうな盆栽や、大きめの植物に使われていることが多いです。
▲大切に守りたい気持ちとは裏腹に、奴隷っぽい見た目。
●結界タイプ
猫だろうが人だろうが、外敵を寄せ付けたくないという気持ちが伝わってきます。
・棒
植物がまっすぐ育つように使われる技ですが、
たくさん並べて柵にしてみたり、意味ありげな境界を作ったりもします。
▲割りばしを並べて柵にしています。味噌カップの台がかわいい。
▲あらゆる角度を囲む…お箸でしょうか。これはどう頑張っても侵入出来なさそうです。
▲駐車禁止アピールに使われている植木鉢。
危険な仕事を負わされつつ、棒に巻かれたテープと鉢の鮮やかな色、タイヤのクッションで守られています。
・パイロン
「 三角コーン」や「赤コーン」など呼ばれるパイロンは工事現場にあるイメージですが、
意外と庭先にもありがちです。
警戒心の強い育て主が好んで使うのか、他の技と併せていることが多いです。
▲上げ底で高い所に置かれ、アーチ状にした猫チクで覆われています。
植物の大きさの割に、ボリュームのある装備です。
ピカチュウのウインクでパイロンの存在を誤魔化しています。
▲右からパイロン、ひも、ペットボトル、駐車禁止の札に囲まれる植木鉢。
パッと見は地味ですが、色々な技を複合的に使っていて味わい深いです。
歓楽街のど真ん中に置かれていたこちら、大変な目に遭ってきたんでしょう。
▲テープで縞模様にされたパイロン、駐車についての様々な指示。
不安定なコンクリートブロックの上に植木鉢が乗せられ、牢屋みたいなカゴに入れられています。
ここに植木鉢を置きたい理由とは、一体…
・その他
▲ 猫や不審者が入ってこないように、波板で通路を塞いでいます。
▲ダンボールは雨に弱そう。
▲道路際のお宅の植木鉢。車の接触対策でしょうか。
手近にあったであろうカーステップをひもでくくり付ける、リサイクル技です。
亀みたい。
●動かす
・モバイル鉢
屋内や軒下へ移動できる車付き。
植木鉢は土とくっ付いてないので、移動しやすいんです。
これで盗まれたり風に飛ばされる心配はなくなります。
手間はかかるけど一番安全な対策かもしれません。
▲ホームセンターで良く見るタイプ。
▲「しんたちゃん」は、持ち主なのか台車の名前なのか、謎めいています。
▲荷物運びに特化した道具、台車。
他の物は運ばなくていいのか気になります。
最後に
植木鉢は育てる人と見る人に豊かさを与えてくれる、まさに庭先のオアシスです。
反面、あらゆる災難に遭いやすくなっています。
(プラスの気持ちでやってるのに、良くないことに遭うってあんまりですね…。)
育て主の「植木鉢を守りたい」気持ちが高まるほどに、
オリジナルの技が組み合わさりユニークになっていく植木鉢から目が離せません。
植木鉢を守っている様子を、これからも見守っていきたいです。