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地図アプリを見ていると「どうしてそんな名前にしたの?」というお店がちょくちょく見つかる。
そんなお店に実際足を運んで、名前の由来を聞くのが「店名ミステリーツアー」だ!


(著者:かとみ




【著者】

かとみ
 (記事一覧 / twitter / サイト「おにノート」

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平日は秘書をしながらマジメな雰囲気を出しています。だいたい甘いもののことを考えています。



地図アプリを開いた際、不意に気になるネーミングのお店と出会うことがある。


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例えば、こちらの【パン】という名前のお店。

アイコンを見ると、パン屋ではなさそうだ。パン屋じゃないのにパン。どうしてなんだろう。
気になったので、どういうお店なのか実際に見に行ってみると…



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洋食レストランだった。
パンはパンでも、フライパンのパン。なるほど、なぞなぞみたいな答えだった。


気になる名前のお店を実際に見に行く。これ、やってみると意外と楽しい。
自分なりにネーミングの理由を推理しながら向かい、現地で解決編を行う。

どのような結末になるかは行ってみないと分からない。気分はさながらミステリーツアーだ。
このミステリーツアー、色々な町でやったら面白そうじゃないか。


ということで、思いついたのが今回の企画。


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地図以外の情報はネット検索せず、現場に足を運び、この目で真実を確かめたいと思う。
では早速いってみよう!



新三河島駅周辺を地図で見てみる


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今回は、東京都荒川区にある新三河島駅周辺を選んでみた。
隣の日暮里駅は何度も使ったことがあるが、新三河島駅は私にとって未知の土地。
知らない町だからこそ、解決しがいのあるミステリーツアーになるだろうという目論見だ。

私は、地図アプリで駅周辺をこねくり回し、気になる名前のお店を探した。



【クリ夫のパン屋】が気になる


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住宅街にぽつんとあった【クリ夫のパン屋】。個性的な可愛らしい名前がひときわ目立っていた。
【クリ夫のパン屋】には、どのようなネーミングの理由があるのだろうか。
実際にお店へ行く前に、向かう道中で推理してみよう。


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一番初めに思い浮かんだのは、オーナーの名前から取っている説。
オーナーは小栗さんという名字ではないだろうか。「オグリ」の文字を入れ替えて「クリオ」。

もうひとつ、栗のパンが自慢のお店という可能性も考えられる。ああ、考えただけでワクワクする。
いや、待てよ。私は栗のお菓子に目がない。



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暇さえあれば栗の情報収集に勤しみ、栗を求めて飛び回っている。
栗のパンが自慢という聞き捨てならない栗情報を、今までスルーしていたのだろうか。
いや、名前すら知らないのは、ちょっと考えにくい。



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ここは「オーナーの名字が小栗さん説」を仮説として立てておきたい。
きっと【クリ夫のパン屋】には小栗さんがいらっしゃるはずだ!



【クリ夫のパン屋】へ向かう

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穏やかな住宅街。地図によると、新三河島駅から徒歩5分、JR西日暮里駅からは徒歩10分の位置にあるようだ。
のんびり散歩しながら向かおう。



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ナイスな手作りイルミネーションを発見。
Key…メッセージ性を感じる。謎解きゲームだったら重要なヒントになるだろう。
しばらく見つめてみたが、【クリ夫のパン屋】には関係なさそうだった。



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静かな住宅街に突然現れた立派な建物。
どうやらシステムキッチンでお馴染みのクリナップ本社のようだ。
新品のシンクのようにピカピカで、すごく説得力がある。

それにしても、ふと街中で見つかる本社というのは、妙に嬉しい気持ちになる。
「へぇ、こんなところに本社があったのねぇ!」ってすごく言いたいセリフだ。


よそ見歩きをしていたら、あっという間に【クリ夫のパン屋】に到着してしまった。
いよいよ真相を突き止める時が来た。
果たして「オーナーの名字が小栗さん説」は当たっているのか?!



【クリ夫のパン屋】答え合わせ


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閉まってた……定休日だった!
ショックで茫然としてしまった。



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シャッターのポスターに可愛いキャラクターが描かれている。
栗モチーフということは「オーナーの名字が小栗さん説」はまだ生きているはず。
ただ、「栗パンが自慢のお店説」も当てはまるので油断できない。

諦めがつかずポスターを眺めていると、衝撃の事実が私の目に飛び込んできた。



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クリナップ!!

「クリ夫」の「クリ」は「クリナップ」の「クリ」!!




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そう、道中で見かけたクリナップ本社はまさかの伏線だったのだ。
まさにミステリー小説のような展開にハマってしまい、私は膝から崩れ落ちそうになった。
【クリ夫のパン屋】がクリナップの経営するパン屋だったとは!


……気が付けば、私は平日に有給を取り、お店を再訪していた。
まだ美味しい栗のパンがある可能性も捨てきれないからだ。
クリ夫のパンを食べるまでは、まだ終えるわけにはいかないだろう。



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可愛いらしい外観からも美味しいパンの予感がする。

店頭ではクリ夫くんがお出迎えしてくれた。
おすすめは「林檎とカスタードクリームのパイ」と「クリ夫のあんぱん」のようだ。



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ここは素直に、おすすめのクリ夫のあんぱんを食べてみよう。



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クリームたっぷりで美味しい。
「クリ夫」の「クリ」は、「クリームたっぷりで美味しい」の「クリ」……!

私は、美味しいクリームあんぱんを食べ、満足したのだった。



喫茶店【おいしい水】が気になる


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地図でひと目見た瞬間、私のハートに突き刺さったネーミング【おいしい水】。
コーヒーカップのアイコンなので、どうやら喫茶店のようだ。



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期待で胸が高鳴る。
どこかの山脈を流れる清らかなお水を仕入れているのだろうか。
ミネラル量や硬度ごとに種類豊富なお水を取り揃えているかもしれない。
店名の通り、おいしい水で淹れた美味しいコーヒーを飲めるに違いない。



喫茶店【おいしい水】へ向かう

地図によると、新三河島駅から徒歩5分もかからない場所にあるようだ。

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新三河島駅前のセブンイレブンの角を曲がる。



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セブンの看板が小さすぎて思わず立ち止まってしまった。すごく良い。知る人ぞ知る隠れ家セブンという感じがする。
ここからコソコソと入ったり出たりして、隠れ家に足しげく通う雰囲気を出してみたい。妄想が止まらない。

しかし、今は急ぎの身。すぐそこで【おいしい水】が私を待っている。
喉もカラカラだ。行こう!



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閉まってた……また定休日のパターン!!

……気が付けば、私は平日に有給を取り、【おいしい水】を再訪していた。



喫茶店【おいしい水】に入ってみる

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味のあるレトロな外観。楕円系の窓がオシャレだ。



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席に着くと、さっそく美味しそうな水が出てきた。
氷なしでもしっかり冷えている。体に染み渡るようだ。美味しい。



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特に水の記載はメニューになかった。

それにしても、喫茶店らしい王道メニューにワクワクが止まらない。
写真のないタイプのメニューって、自分の運とセンスを試されてるようで燃えてしまう。



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注文のブレンドコーヒーとタマゴトーストが運ばれてきた。
そして、すぐに確信した。当たりだ!
ブレンドコーヒーは、まろやかでとても飲みやすかった。美味しい。



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タマゴトーストはオムレツタイプ。パンとタマゴの間に薄く塗られたマヨネーズが懐かしい味わいだ。
ノンストップですぐさま完食。

さて、食事にすっかり夢中になってしまったが、今回の目的は【おいしい水】というネーミングの理由を知ることだ。



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店内の蛇口型のランプ。凝ってる。こんなにも【おいしい水】にぴったりのランプがあるだろうか。



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木の椅子の背もたれには【おいしい水】と彫られていた。凝ってる……!
店内に散りばめられた【おいしい水】を彷彿とさせるアイテムに、感極まってしまった。こだわりがすごい。

感動の勢いで、食後のお皿を下げにきてくださった店員さんに聞いてみた。



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「お店の名前、とても素敵ですね! どうして【おいしい水】というんですか?」



【おいしい水】答え合わせ

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「よく聞かれるんですよ。珍しい店名だからですかね。」



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「はい、私も店名が気になって入ってみたんです! やはりお水にこだわっていらっしゃるんですか?」



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いや、お水は普通です。あ、何というか、普通においしいお水で、ちゃんとしたものなんですけど……。
すみません、今オーナーが不在で詳しくは分からなくて……」



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「いえいえ! お引き止めしちゃってすみませんでした。」


店員さんに聞いたが、明確な答えは分からなかった。
美味しいコーヒーと食事、こだわりの内装、こんなにも【おいしい水】要素は揃っているのに…!

いや、諦めるのはまだ早い。
そう思い直し、私は改めて店内を見回してみた。
すると壁の様子に気が付いた。



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沖縄の珍しい鳥の写真、島の地図、オーナーらしき男性が大きな魚を掲げている写真。
沖縄の自然を思わせるものが貼られているじゃないか。
きっとこれだ。沖縄にまつわる水を使っているのではないだろうか。

今回は推測で終わったが、真実に一歩近づけたような気がする。
またオーナーさんがいらっしゃる時にお店を訪ねてみよう。



お会計の時に、先ほどとは別の店員さんに何気なく聞いてみた。


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「壁の写真、魚を持ってるかたがオーナーさんですか?」



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あ、あれは近所の人です。貰った写真を飾ってます。


近所の人! オーナーじゃなかった!
じゃあ沖縄のお水説は…?!
取り乱した私は、もう一度店員さんへ質問してみた。



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「すみません、【おいしい水】というお名前はどういった経緯でつけられたのでしょうか…?」



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お水ってすべての原点ですよね。どんな食材にもおいしい水は欠かせません。
おいしい水を、美味しいコーヒーや美味しい食事という形でお客様にお届けしたいという思いが込められています。
それと、原点を大切に、初心を忘れずに、という意味もあります。



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なるほど、素晴らしいネーミングですね!
コーヒーすごく美味しかったです。ごちそう様でした!


【おいしい水】には「原点」という意味が込められていた。
推理は見事に外れたが、温かな思いのこもったネーミングに、深くうなずくばかりだった。



終わりに


今回は、経営している会社名から取ったネーミング、オーナーの密かな思いが詰まったネーミングのお店に出会うことが出来た。
まだまだ色んなパターンの店名があるに違いない。これからも楽しみだ。



【著者】

かとみ
 (記事一覧 / twitter / サイト「おにノート」

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平日は秘書をしながらマジメな雰囲気を出しています。だいたい甘いもののことを考えています。