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路上観察コンビ SABOTENSがいいサボテンをまわる旅「サボテンお遍路」をスタートしたぞ!
今回は一番札所「フジミ電機の豪腕柱サボテン」を巡る


(著者:SABOTENS
 


【あらすじ】

路上観察コンビ SABOTENSが、迫力あるサボテンを探してまわるサボテンお遍路に飛びだした!
お遍路だから、八十八ヶ所。今回は一番札所の「フジミ電機の豪腕柱サボテン」だよ。

前回記事

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5月某日。神奈川某駅。
いよいよここから、サボテンお遍路がはじまる。
空はすっきりと晴れて、風が心地よい。絶好のお遍路日和だ。
旅のお供は、よっちゃんの愛車・黒いミニクーパー。


あ、あらためて自己紹介を。
「よっちゃん」こと藤田泰実(よしみ)さんは、道に落ちているものを「落ちもん」と名付け、見つけるたびに写真に撮り続けている「落ちもん写真家」。


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路上銀河 天の川 #落ちもん #天の川 #銀河

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そしてわたしは「路上園芸学会」こと村田あやこ。
街角で人の手を半分離れ、異様な生命力を放つ植物に惹かれ、ひとり勝手に学会を名乗り、その奇景の魅力を細々と発信している。
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座ったが最後

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妖怪モンステラ

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そんな私たちは「SABOTENS(サボテンズ)」というユニット名で、路上ではみ出した様々な光景をグッズ化したり、展示やイベントで発信している。
数ヶ月前から、街中のびっくりサボテンを巡る「サボテンお遍路」を始めた。

今回のメインの目的は、谷中さんのご友人Oさんに伝言を渡すこと(前回記事参照)。
しかしせっかくなので、道中もサボテンを探しながら向かうことにした。


通常お遍路といえば、弘法大師の足跡として定められた霊場を巡拝する。
しかし「サボテンお遍路」は、霊場を自ら探す必要がある。

とにかく「えぇっ!」と驚くようなサボテンが、サボテンお遍路にとっての霊場。
しかしインパクトのあるサボテンが八十八ヶ所も見つかるのか?
一抹の不安がよぎるが、とにかくスタートしてみることにした。
まずは過去の記憶を辿り、巨大なサボテンに遭遇した場所を再訪してみることに。


最初の目的地は湘南台のとある電気屋さん。
以前、ちょっとした用事で近くを訪れた際、入口の庇を持ち上げんばかりに成長したサボテンを見て記憶に残っていたのだった。

ナビに目的地を打ち込み、いざスタートしたところ、走り始めて5分でふとした違和感を感じる。
同じ市内に同じ名前のお店があり、そっちが目的地になっていたのだった。慌てて住所を入力しなおし、再スタート。
しょっぱなから珍道中の予感しかない。
気を取り直して車を走らせる。


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ちなみに「サボテンお遍路」と名乗ってはみたものの、ちゃんとしたお遍路をやったことがないため、全然知識がない。
お遍路とは、そもそも何を目的にするんだろうか。
「お遍路 目的」でググってみると、亡き人の供養、健康祈願、自分探しなど、目的は人それぞれで良いらしい。

折しも三十路半ばのふたり。仕事に家庭に健康に、だんだんと一筋縄ではいかないことが増えてきた。祈願したいことは山ほどある。
ま、大きいことは求めないから、このお遍路だけは、そんな日々のしがらみとは無関係に、気楽に心安らかに。そんな感じでゆるゆるとスタートした。


第1番札所 フジミ電機(神奈川県藤沢市)


さて、目的地が近づいた。
急にそわそわしてくる。
というのも、以前この場所でサボテンを見たのは数年前。植物は年月を経て見た目が変わるだけでなく、様々な事情で処分されてしまうこともあるので、必ずしも同じ状態であるとは限らない。

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ドキドキしながら角を曲がると…



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「あったー!!!すごーい!」

無事に残っていた!

しかも以前見た時よりも成長し、庇の持ち上げ方になんだか凄みが増しているぞ。
いやぁー、再会するまで不安だっただけに、喜びもひとしおだ。

気もそぞろに付近の駐車場に車を停め、じっくりとその姿を拝むことにする。



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ううむ、でかい。

お店の庇の前面に伸びたり、庇に当たって折り返したり。全体的に躍動感たっぷりだ。



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乾燥地帯出身のサボテンは、茎の中に水分を溜め込む独特の体つきをしている。とにかくその姿かたちが珍奇でおかしい。
「でかい植物」枠だと、巨樹を見た時ももちろんびっくりするのだが、個人的に巨大サボテンのびっくり度は、その比じゃない感じがする。この独特の体のつくりのせいなんだろうか。
なんというか、ドーパミンがドドドっと出るような興奮を覚えるのだ。

ちょうど従業員の方が手入れに出ていたので、声をかけてみた。
このサボテンは、前の店長さんが入手し植えたそう。7月頃に白いお花が咲くとのこと。
花が咲いたらきっと壮観だろう。

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さて。ネットで調べたにわか知識によれば、通常お遍路は、各礼所でお経を奉納し、その証として御朱印をいただくらしい。
今回サボテンお遍路にあたっては、サボテンとの記念撮影を巡拝の印とすることにした。
二人しかいないので、カメラを三脚にセットし、セルフタイマーで撮影。


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……写真に写った自分たちの姿を見て、怪しげな宗教団体、あるいは調子に乗った観光客のような不審極まりない佇まいに、動揺してしまった。
しかし本人たちは大真面目である。

お店がある場所は車道沿いの、しかも信号の手前。赤信号でバスや乗用車が停まる度に、車窓からこちらをチラッと一瞥しては見て見ぬ振りされる。
しかしここで心が折れていては、巡拝とならない。
自分たちで勝手に決めたルールに早くも首を絞められながらも、心を強く持ち次の礼所を目指すことにした。
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【1番札所】豪腕柱サボテンの御朱印

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【著者】

SABOTENS
記事一覧

 5h-Txxpj (1)

路上に落ちているアイテム(=落ちもん)に着目し撮影し続ける「落ちもん写真家」の藤田泰実と、街角の園芸活動や育ちまくった植物に魅力され「路上園芸学会」名義で魅力を発信している村田あやこの二人組。路上にはみ出す光景のおもしろみを写真展示やグッズなどで発信している。